日本ローカーボ食研究会

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症例1 外来の重症DM患者へローカーボ食+インスリン治療

55歳、男性、企業経営

10年前から境界型糖尿病を検診で指摘、2007年1月体重減少がすすみ、検診でHbA1cの悪化を指摘された。K病院を受診し2型DMと診断、入院とインスリン治療を勧められたので、ローカーボ食による治療を希望して初診。
最近、ジュースなどの甘い食品の摂取は全くなかったので、ソフトドリンクケトーシスは除外できた。

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治療経過と解説

初診時のHbA1c11.6%、体重61kg、BMI:18.4。血清脂質の変化は図を参照。

このようなHbA1c>11%の重症DMでは、諸検査を省略してすぐに厳しいローカーボ食(%C=20%)を導入すべきで、初診時から早速、3食炭水化物制限を行った。当時の食事調査を行っていないが、おそらく15%炭水化物前後だと思う。経営者という激務なので、脂肪を自由に摂取させた。患者がまじめに厳しいローカーボ食を実行できるかどうかはやってみないとわからないが、経験的にインスリン導入と入院を勧められ転院してくるような患者は、必死にローカーボ食を実行する場合が多いように思う。

この患者は家族の協力もあって、完璧なローカーボ食を実行、驚異的なスピードで3ヶ月後にはHbA1c6.6%まで降下した。ローカーボ食ではこれからの粘りの方がむしろ重要である。多くの患者は厳しいローカーボ食を維持するのは困難で少しずつ緩むのが一般的で、この患者もHbA1cはゆっくり上昇していった。初診から約1年後にHbA1c7.8%まで緩やかに悪化した。この頃のローカーボ食の調査では、総摂取エネルギーは2667kcal、P:F:C=18%:45%:27%でかなり厳格な制限ができていた。アマリール1mgまたはグリミクロン40mgにアクトス30mgを加えてみたが、おそらくインスリン分泌能は低いのだろう、反応はまったくなかった。

そうこうするうちに患者が「昼にごはんが食べたい」と訴えるようになった。初診時から1年7ヶ月後にインスリン導入した。朝と夕食には炭水化物・糖質制限するので、昼にノボラピッド、寝る前にランタスを使った。一時HbA1cが6.0%前後まで下がったので、Curieらの総死亡率とHbA1cの関係を考慮して、インスリンを少し減らして2011年5月現在、HbA1c6.8%前後、体重68kgである。インスリンは体重増加(BMI:20.5)と血清脂質(LDLとHDL)のわずかな悪化をもたらせた。将来の癌などの発症を考慮するともっと体重は増えた方が有利だと私は考えている。

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