一般の皆様へ
はじめに
ようこそ、日本ローカーボ食研究会のホームページへ。
日本ローカーボ食研究会は糖尿病やメタボリック症候群の治療にローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食を実践している医師・管理栄養士らによって2011年3月に設立されました。設立に参加した医療機関では、すでに数千人の患者さんがローカーボ食による治療を受けています。
ローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食は糖質を制限することにより血糖の上昇やインシュリンの分泌を抑えるという科学的に考えられた新しい食事療法なので、これまでの常識(脂っこいものやカローリーを控える)と違って見えるかもしれません。ローカーボ食では炭水化物・糖質を制限しても脂肪やカロリーを制限しないので十分なカロリーも摂れるため、空腹感も少なく、また面倒なカロリー計算も必要ないので忙しい方やご高齢な方でも簡単に実施できます。しかも、従来のカロリー制限食に比べて血糖、HbA1c(糖尿病の指標)、HDL(善玉)-コレステロール、中性脂肪を改善する効果や、体重減少にも優れた効果がある体にやさしい食事療法です。
この研究会の目的
そのめざましい効果に目を奪われがちですが、ローカーボ食にはまださまざまな課題があります。ローカーボ食はしっかりした動物実験や臨床研究はなされず、また科学的根拠に基づく議論もされず、安全性や有効性が確立されないまま啓蒙書やネットなどによって広まりました。その結果、科学的根拠の不確かな情報が氾濫する状況となりました。
一方、世界のローカーボ食研究をみると数百編もの臨床研究が発表されています。最近では、ハーバード大学が大規模で長期間の研究(女性8.5万人26年間、男性4.5万人20年間)の成果を発表しました。それによると、ローカーボ食を厳しく実施すればするほど死亡率はカロリー制限食(従来の食事療法)よりもむしろ高くなることがわかりました。これには脳心血管障害だけでなく癌の発生が強く関係し、ローカーボ食の動物性脂肪・蛋白質の取りすぎが課題となりました。しかし、患者さんの食事内容を調査して指導法を工夫すれば、逆にカロリー制限食より死亡率は低くなることも同じ研究で示されています。またもっと身近では、体重の減りすぎや便秘、効果的な糖尿病薬の使い方、食事指導法のあり方など課題はたくさんあります。
このような世界の科学的情報を幅広く知ると、現在みなさんが目にしたり、聴いたりしているローカーボ食のあり方を大幅に修正せざるを得ないことをご理解いただけるでしょう。しかし、残念なことに世界ですでに発表されている数百編ものローカーボ食研究はすべて英文ですから、日本の医療関係者へも患者さんへも正確な情報はほとんど届いていません。
日本ローカーボ食研究会の主な目的は、ローカーボ食の効果・利点だけでなく弱点も正確に把握するために、世界と私たちの臨床研究の成果を多くの医療機関の方々や一般の皆様にも知ってもらうことです。そのために海外の最新の研究をホームページで提供し、定期的な研究集会を開くことにしました。 このホームページの、一般の皆様へ「ローカーボ食について」ではローカーボ食の基本から具体的なやり方までわかりやすく解説しています。もっと詳しく知りたい方のために、医療機関用の「ローカーボ食について」のなかで2011年春までの海外研究で重要なものや私たちの臨床研究を網羅して、詳しく解説しました。
どのようにローカーボ食を実施すれば糖尿病やメタボリック症候群の治療に有効で、それでいて将来心筋梗塞も脳梗塞もそして癌をも予防できるのでしょうか、医師・管理栄養士・看護師と一緒に考えていきましょう。 また、ダイエット(体重減少)を目的とする方々にも正しい情報を知った上でローカーボ食を実践していただきたいと願っています。そしてなによりも私たち医療関係者が患者さんや一般の皆様の声に耳を傾けつつ、コツコツ一つずつ臨床研究を積み上げていくことが、広く皆様方へ誠実なローカーボ食をお届けする最善の道だと私たちは考えています。