日本ローカーボ食研究会

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第11章 厳しい糖質制限の危険性ともっとも死亡リスクが低い糖質比

日本ローカーボ食研究会代表理事 
灰本クリニック 院長 医師 灰本 元

1.海外の大規模観察研究から

 ある食事を長期にわたって続けたとき、それが安全かどうかを証明するためには無作為化比較試験や治療介入研究という方法は有効でなく、数万人を10年以上にわたり観察するなどの大規模な長期間観察研究から類推するしか方法はありません。2013年までに海外で6つの大規模長期観察とそのメタアナリシスが発表となり、糖質を厳しく制限すればするほど死亡危険度は増えることが明らかになっています。癌死も心血管障害死も増えますが、メタアナリシスでは癌死の増加が明らかでした。厳しい糖質制限によって癌死が有意に増える理由はまだ判っていません。6つの観察研究のうちアメリカ人(図11-1)とスウェーデン人女性(図11-2)の観察結果を示しました。

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前者では糖質を厳しく制限するほど男女共癌死、男では心血管死も増え、後者では心筋梗塞死が増えることがわかります。ここで注目して欲しいのは、もっとも糖質をたくさん食べている人が癌でも心血管障害でも最も死亡リスクが低いことです。

 一方、日本の一般住民を対象とした大規模長期観察研究では,エネルギーをベースとする糖質比が70%から50%までは死亡危険度が直線的に減っていきます。欧米の大規模長期観察研究でも糖質比45%までのゆるやかな糖質制限はカロリー制限と比べても死亡リスクや癌発症リスクに有意差はないようです。

2.もっとも死亡リスクが低い糖質比は53%前後

 「もっとも死亡リスクが低い糖質比は?」との問いに答えられる研究はまだ少ないのが現状ですが、2018年にアメリカで一般住民1.5万人を25年間追跡して糖質比53%前後でもっとも死亡リスクが低いという研究が発表になりました(図11-3)。

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とくに注目して欲しいのは、糖質比が53% より増えた場合の死亡リスクは高くてもせいぜい1.1倍ですが、糖質比が53%から減れば減るほど死亡リスクは高くなり、厳しい糖質制限食の領域(糖質比≪30%)では1.6倍と60%も増えます。先ほどのアメリカとスウェーデンの研究でも、糖質をたくさん食べている人の方が死亡リスクは低くなっていました。糖質制限をしない方が長生きと言えるようです。死亡リスクが低い領域は点ではなく50~58%の範囲に分布しています。

 まだ論文発表はされていませんが、日本人のデータは名大の若井先生が2015年の日本疫学会で発表しました。アメリカ人に比べ糖質比のばらつきは少ないのですが、やはり糖質比53%の近傍で死亡リスクが最少となっています。現在の日本人の平均値が55-60%ですから、それより2-7% 糖質比を下げるのが理想的なようです。男性で2000kcal/日の摂取なら毎日の糖質を10-35g制限、女性で1800kcal/日なら毎日の9~32g制限/となります。これはごはん一杯の1/2~2/3量、食パン1枚、ケーキ1個、おかき小袋一つ、または饅頭1個の制限に相当します。もし理想的な糖質比を50%までと厳しくするとしても、ご飯一杯または食パン2枚程度の制限になります。この程度なら簡単に減らすことができる糖質量ですから、現在糖尿病のない方々にお薦めできます。

 しかし、糖尿病を既に発症している患者にはこの程度の制限では緩すぎ、HbA1cはせいぜい0.5%しか下がらないでしょう。糖尿病患者の治療には、ゆるやかな糖質制限をさらにゆるめてもHbA1cの低下に効果的なローカーボ食治療の方法を探し出す必要に迫られています。

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