日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

設立の趣旨

 日本ローカーボ食研究会は2011年に医師、管理栄養士、薬剤師、生理学研究者などが集まって発足しました。主な目的は、ゆるやかな糖質制限食を2型糖尿病や肥満の治療へ組み込むため安全で有効な指導方法を医療機関や広く一般に啓蒙すること、それに臨床研究を行うことです。これまでに定期的な講演活動、学術集会、症例検討会、学術論文の発刊、啓蒙書の出版​​​​​​​「正しく知る糖質制限食」(2013年 技術評論社)、「ゆるやかな糖質制限食による2型糖尿病治療 -ガイドライン2016-」(2016年 風媒者)、「医師が実践するおいしい糖質オフレシピ216」(2018年 西東社)などを行ってきました。その間、この食事療法は一般に広く知られることになりましたが、未解決の課題はまだたくさん残っており臨床研究による解決が期待されています。また、この会はゆるやかな糖質制限食にとどまらず、食事療法を生活習慣病全域、循環器疾患、呼吸器疾患、癌、認知症や老化など広い分野に活用するために学術的、臨床的な情報を発信しています。

事務局より

新着情報を更新

2021年、私たちのゆるやかなローカーボ食


NPO日本ローカーボ食研究会 代表理事 灰本 元

 ローカーボ食(糖質制限食)は世の中に一巡し急速に一般化しました。私たちがこの食事療法を始めた2004年頃にこの食事療法の正しい知識を持った医療関係者はごくわずかだったので、完全に糖質を削除する厳しい糖質制限食を吹聴する医師やそれを盲信した患者も多く、それによってうつ状態、カヘキシー、月経停止などの健康被害に陥った患者も数多く来院していました。2010年前後から厳しい糖質制限を長期に行うと異常体重減少、癌死、心筋梗塞死などが増えることが世界的に明らかとなり、私たちも厳しく制限しないように啓蒙活動を行った結果、昨今、そのような患者を見なくなりました。啓蒙が奏功したこともありますが、実際に厳しい制限をした人たちに健康被害を自覚して継続できなかったというのが現実のように思います。
 生命の進化の歴史をエネルギー源という視点から見ると、常に糖質代謝を中心にして回っており、糖質は生命にとって唯一無二の存在です。糖質が肥満や糖尿病などの生活習慣病を発症する主な原因となっているのは事実ですが、現代社会が電化製品や自動車などによって極端に運動量が減っているという背景なしにはそれは起こりえません。糖質を大量にとっても70年以上前にタイムスリップすると生活習慣病は発症しないでしょう。国民栄養調査の三大栄養素の摂取量の推移によると、私が生まれた1955年頃には糖質摂取量一日410gも摂っていましたが、最近で280gまで低下しています。しかし、その間、糖尿病の発症は数十倍にふえています。脂質摂取量は高度成長期の1975年をピークにしてそれから変化していません。糖質摂取量は2/3に減ったにもかかわらず糖尿病が増えたのは、糖質減少分に以上に運動量が激減したことが原因です。私が生まれた頃、母は朝から薪を割って七輪で火をおこし、井戸から水をくみ上げて朝ご飯を作っていました。もちろん車も洗濯機も掃除機もない時代です。当時と比べると運動量は1/5以下になっていると高齢の患者さんたちは言っています。
 一方、日本の一般住民と糖質量と総死亡の関係をみた研究は三つあります(NIPPONDARA,JPHC,JACC)。日本ではアメリカほど糖質制限食が流布していないので、厳しい制限を実行している日本人はほとんどいないという背景を前提にして、日本人の一般住民の平均的糖質摂取量を男で300g、女で260g前後とすると、もっとも死亡リスクが少なかったのはそれより60gほど少ない人たちでした。これはごはん一食分(55g)に相当します。そのような食事とは朝昼食は今まで通りとして、夕食のおかずから糖質を抜いてご飯を2/3減らした程度の糖質摂取量に相当します。かなりゆるやかな糖質制限食となります。
 一方、体重減少や糖尿病治療を目的とする場合には、もう少し糖質制限をしっかり行う必要があるのですが、その場合でも最も死亡リスクが少ない200g~240g/日というポイントは常に念頭におくべ気です。
 糖尿病や肥満をゆるやかな糖質制限食で治療するとき、安全で効果的な糖質制限食とはどのようなものか、2021年の時点でまとめておきたいものです。次回から私たちの最近の研究成果を中心に解説します。
・2021年、私たちのゆるやかなローカーボ食(2) -糖質を多く含む食品管理から糖質グラム管理へ-
・2021年、私たちのゆるやかなローカーボ食(3) -総糖質量から個々の糖質源の管理へ-
・2021年、私たちのゆるやかなローカーボ食(4) -糖質源によってHbA1cへの影響は全く異なる-

●灰本先生の最新論文を掲載しました

【ゆるやかな糖質制限を行っている2型糖尿病患者ではそれぞれの糖質源由来の糖質摂取量減少はHbA1cへ違った効果を持っている】
(Diabetes Metabolism Journal 2020)
 論文の主旨は、糖質源によってHbA1cへ与える影響は異なることです。
 私たちは2014年に糖質110g減少はHbA1c1%下げることを報告しました(Nutri & Metabol)。その方法を使って指導すると下がりすぎてしまう患者にしばしば出会いました。その理由は糖質源(糖質を多く含む食品)の種類によってHbA1cへの影響は大きく異なるのではないか、という仮設を立てました。そして、薬を使わずにゆるやかな糖質制限食だけで6ヶ月間治療した245人の2型糖尿病患者の治療前後の3日間の食事日記を分析して、それぞれの糖質源由来の糖質を50g減らすとどのくらいHbA1cが下がるかを統計的に解析しました。論文は2020年のDiabetes Metabolism Journalに掲載されました。
詳細はこちらから

●第11回日本ローカーボ食研究会学術総会日程のお知らせ
2022年3月13日(日)午後を予定しております。詳細が決まり次第更新致します。


第10回日本ローカーボ食研究会学術総会WEB配信はこちら

NPO法人日本ローカーボ食研究会学術総会のウェブ講演会
【学術総会のプログラムはこちら】
◆動画配信方法につきましては、YouTubeにて配信中です。動画視聴をご希望の方は、下記メールアドレスまで連絡をお願い致します。
e-mail:low.carbo.diet@gmail.com

 

●「医師が実践する おいしい糖質オフレシピ 216」発刊のお知らせ

LC recipe.jpg NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事 灰本 元先生 監修による待望のローカーボ食(ゆるやかな糖質制限食)レシピ集が発刊となりました。
 本書は生活習慣病予備群や一般の方々が少しでも健康に生きるために、わたしたちがこの十数年間にローカーボ食の臨床研究を積み重ねて到達した、安全で効果的なローカーボ食の方法があちこちにちりばめられており、ゆるやかな糖質制限食、本書では糖質オフのノウハウを満載した一冊となっています。西東社より2018年7月発刊 1,400円+税。
全国の書店でご購入いただけます。

 【発刊にあたり】

 ★レシピ集を使って脂質摂取の増加に成功★
 amazon

 ●灰本先生の最新論文を掲載しました

【糖尿病治療薬を非服用の日本人2型糖尿病患者における炭水化物およびその由来食品のHbA1c値に対する影響】

詳細はこちらから

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海外の注目論文

英論文抄読会(ジャーナルクラブ)とホームページ掲載への経緯

2014年春から灰本先生とじん薬局薬剤師との英論文抄読会(ジャーナルクラブ)がスタートしました。私たち薬剤師の医学的知識、臨床的知識が圧倒的に不足していたことが始まりでした。

> 詳しくはこちら

2019年11月19日

212.高いアルコール消費量は遺伝的および環境要因と独立して男性の41年間の冠動脈疾患死亡リスクの低下と関連する

Higher usual alcohol consumption was associated with a lower 41-y mortality risk from coronary artery disease in men independent of genetic and common environmental factors: the prospective NHLBI Twin Study.
Jun Dai et al. The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 102, Issue 1, July 2015, Pages 31?39, https://doi.org/10.3945/ajcn.114.106435

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新着情報

2021年09月06日

2021年、私たちのゆるやかなローカーボ食(3)-総糖質量から個々の糖質源の管理へ-

灰本 元

 2014年に発表した研究結果を発展するために糖尿病薬(DM薬)を飲んでいない糖尿病患者に薬を使わずにゆるやかな糖質制限食単独で治療する方法を2014年から開始した。ところが、初診時にDM薬を飲んでいない患者は初診患者の半分にも満たないので症例数を集めるのにずいぶん時間を労した。

2021年07月08日

悪玉コレステロール神話が崩れる 第4回 -まとめ-

 ここまでに書いてきたことをまとめると、喫煙や糖尿病などの心筋梗塞のリスクのない日本人ではLDLコレステロール値は少なくとも80-180 mg/dlぐらいが妥当で、180 mg/dl以上が持続する場合は年齢や心筋梗塞の家族歴、頚動脈エコーの動脈硬化の程度を見てスタチンを使うかどうか判断すべきということになります。

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人工甘味料について

2019年04月26日

腸内細菌と病気 その1「腸内細菌を壊す身近な食品と薬」

灰本クリニック 灰本 元

 腸内細菌とは主に小腸~大腸に生息する細菌のことです。口腔内には唾液1mlあたり1億個の細菌が生息していますが、胃ではPH1という強力な酸性のなかで著しく生息数は少なくなり、小腸から大腸に下りるにつれて増加し、大腸では1兆個/便1gに達するといいます。

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