日本ローカーボ食研究会

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第4章 糖質と脂質の代謝の違いとカロリー神話の崩壊 その2

日本ローカーボ食研究会代表理事 
灰本クリニック 医師 灰本 元
名古屋大学名誉教授(細胞生理学) 加藤 潔

 エネルギー源として使い勝手が良いのは糖質のグルコースです(グリコーゲンは貯蔵体)。グルコースは血糖として体内各所に運ばれて臓器・細胞に取り込まれ、解糖により酸素呼吸の基質(燃料)を生産するための原燃料であるアセチルCoA(活性酢酸とも言う)に分解されます。アセチルCoAはTCA回路で改質され、脱炭酸を受けて酸素呼吸の燃料(NADH、FDAH2)として調製され、次いで酸素と反応してATPを生成します(この過程が酸素呼吸と呼ぶ生化学反応の核心)。

 脂質のエネルギー密度は高く貯蔵エネルギーとしてたいへん適しています。しかし、その利用は糖質ほど容易でありません。まず、脂質は水との親和性が低いので血流に乗せるにあたって親水性のリポタンパクでコートして親水性の粒子(カイロミクロンや悪玉、善玉コレステロールとして知られるLDLやHDL)とするか、分解して脂肪酸をアルブミンと結合させる必要があります。さらに、呼吸の燃料として利用するに当たっては、原燃料であるアセチルCoA(活性酢酸)にまで分解する必要があります。この過程は脂肪酸のβ-酸化と云いアセチルCoAを生成する反応を幾度も繰り返えす複雑な過程です。アセチルCoA以後はグルコースの場合と同じようにTCA回路で改質して酸素呼吸の燃料(NADH、FDAH2)に調製されます。体内輸送にしろ、燃料調製反応(β-酸化)にしろ、糖質に比べるとエネルギーとして利用するに当たっては手間暇かけなくてはなりません。

 肝臓でβ-分解される脂肪酸についてはケトン体と呼ぶ水溶性の分子に分解し、血流に乗のって各臓器にエネルギー源として供給することが可能です。ケトン体は水溶性の脂肪酸という見方が可能です。ただ、以上のような複雑さのためか、血糖と違い脂質のエネルギー利用には臓器や細胞の違いにより差が出ます。例えば脳神経系はエネルギー源の好みがうるさく、赤血球はエネルギー源として血糖しか受け付けません。

 最後に、かかる手間暇に違いがあってもエネルギー源として呼吸の燃料に調製されてしまえば糖質由来か脂質由来かで差異はありません。しかし、生化学的には糖から脂肪酸への変換は容易であるものの脂肪酸から糖への変換は炭素数が奇数個の糖原性の脂肪酸でしか出来ません。糖質、脂質はエネルギー代謝以外にもそれぞれ固有の生化学反応系を形成しています。このことが、栄養として三大栄養素をバランス良く摂取すべきとする栄養学の常識と深く関わっているものと思われます。

 このように、同じエネルギー源であってもその利用にあたっては糖質と脂肪とで体内で全く異なった代謝系の関与を受け、脂質摂取が直接的に血糖値に影響することはありません。食物の含有カロリー(エネルギー)だけを食餌治療の尺度にすることはあまりにも前時代的であることに間違いありません。このことが、同じ含有カロリーの栄養を摂取しても、ローカーボとハイカーボとで血糖値やインスリン分泌の異常を始めとする糖尿病に及ぼす影響が著しく異なることの生理学的な理由であるものと考えられます。これまでのカロリー調節に頼った糖尿病治療の歴史が栄養学の進歩を妨げていたとも云えますが、今後の進歩を考える上での反面教師になったとも云えます。それにしても、ローカーボダイエット治療進展の大きな契機が民間療法にあったことは、今後に大きな示唆と教訓を残したとも云えましょう。

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