日本ローカーボ食研究会

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症例2 高血糖値、ケトーシス患者のローカーボ食単独治療

かなりの重症患者でも初診時からきっちりと3食ローカーボ食を実行すれば、外来でコントロールできます。最近の5年間、灰本クリニックではケトーシスを入院治療する機会はなくなりました。

80歳、男性、無職、初診

××年2月3日初診。主訴は「数日前から口が渇いて毎日2L以上の水を飲み、20分毎の頻尿、体もだるく、一月で3kgやせたので、糖尿病ではないかと思うので調べて欲しい」。同居の婿さんと一緒に来院。婿さんは大学病院で糖尿病の厳しい治療を受けており、糖尿病についてたいへん知識豊かなご一家でした。

体重 69.0kg、159cm、BMI:27.3尿糖 4+、蛋白尿-、潜血血-、尿ケトン体1+、血糖値525mg/dl, HbA1cb6.6%、抗GAD抗体陰性、血清中のアセト酢酸119(<55)、3ヒドロキシブチル酪酸377(<85)、総ケトン体496(<130)でケトン体は著明に上昇していました。大量のソフトドリンクを飲んでいなかったので、ソフトドリンクケトーシスではありませんでした。

ローカーボ食を説明すると、薬を使わずに済むならやってみたいと家族もおっしゃるので、3食制限(3CARD)から開始。同時に脱水があるので胸部XPや心電図で心疾患がないことを確認して、2月3-5日の三日だけ500ml/日の輸液をしました。一般的にはもっと輸液をしますが、この患者ではせいぜい3kgの減量だったので、輸液は少量としました。

この患者では毎日管理栄養士が食事内容を聞いて、徹底的な3食ローカーボ食を実行させました。家族もたいそう協力的でした。翌日からの食後血糖値(朝食はローカーボ食)の推移をグラフに示します。体重が増加に転じた2月5日までは尿ケトン体は陽性、これは高血糖(525→340mg/dl)を伴う病的なケトン体です。ところが、徹底したローカーボ食ではわずか2月7日には朝食後血糖値は156mg/dlまで低下します。このあたりで病的なケトン体は消えます。その後は血糖値が正常な状況でローカーボ食の脂質が中心にエネルギー代謝されるので、生理的な尿ケトンが-~+になり、ローカーボ食がうまく機能してことになります。尿中ケトン体は安定しないので3食ローカーボ食でも-のことがあります。

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患者の朝食後血糖値はどんどんさがり、3月4日には127mg/dlとなった時点で炭水化物3食制限から2食制限(2CARD)へ緩めています。6月18日の空腹時血糖値は108mg/dlで尿ケトン-、この時点で1食制限(1CARD)にさらに緩めました。6月18日の空腹時IRI=3.22、HOMA-R=0.9、LDL-chol=124, HDL-chol=59,TG=44, その他の生化学とCBCは正常範囲でした。

念のためおこなった腹部CTでは肝臓や膵臓に悪性腫瘍はありませんでした。なお、経過中に糖尿病薬を全く使っていません。ローカーボ食のすばらしい効果がよくわかる症例です。HbA1cの推移は2月6.6%→3月7.1%→4月6.1%→5月6.2%で、きわめて早期の増悪とケトーシスから治療を開始できたことがわかりました。一般的には一月くらい経過して、体重10kg減少、HbA1c>12%で来院する場合が多いと思います。

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