研究会の論文を紹介
ゆるやかな糖質制限を行っている2型糖尿病患者ではそれぞれの糖質源由来の糖質摂取量減少はHbA1cへ違った効果を持っている (Diabetes Metabolism Journal 2020)
灰本 元1)、渡邊志帆2)、前田恵子3)、村瀬孝司4)、若井建志5)
1) 灰本クリニック 内科
2) 灰本クリニック 臨床栄養科
3) 愛知淑徳大学、健康科学科
4) リブラささしまクリニック、糖尿病内分泌内科
5) 名古屋大学大学院医学研究科予防医学
◆要 約
【背景】
私たちは2型糖尿病患者において様々な糖質源由来の糖質を減量することによって達成されたHbA1c減少を評価した。
【方法】
私たちは糖尿病治療薬を服用していない患者で6ヶ月間のゆるやかな糖質制限を行った外来患者、男性138人、女性107人を追跡した。各糖質源由来の糖質摂取量の変化(Δcarbohydrate)を治療前および治療6ヶ月後の3日間の食事記録から評価し、HbA1cの変化(ΔHbA1c)との関連性はSpearmanの順位相関係数および重回帰分析を用いて解析した。
【結果】
HbA1cの変化は男性では-1.5%±1.6%、女性では-0.9%±1.3%であり、一方、総糖質摂取量の変化は男性では-115.3±103.7g/日、女性では-63.6±71.1g/日であった。HbA1cの変化との正の相関は総糖質摂取量の変化(rs=0.584)との間に認められた。男性ではΔソフトドリンク由来糖質(0.368)、Δ菓子由来(0.361)、米由来(0.325)、Δパン由来(0.221)、Δラーメン(0.199)由来の糖質摂取量の変化と正の関係があり、女性では総糖質摂取量の変化およびΔ米由来(0.376)、Δ菓子(0.195)由来の糖質摂取量の変化とに正の関係があった。それぞれの糖質源を50g減量することによって低下するHbA1cは、男性では総糖質から減らすと0.43%、ソフトドリンクからは1.33%、菓子類0.88%、パン0.63%、ラーメン0.82%、米0.34%であり、女性では総糖質0.45%、菓子類0.67%、米0.34%であったが、これらの糖質源を由来とする糖質摂取量の平均減少量は米由来よりはるかに少ない量であった。
【結果】
ソフトドリンク、菓子類、パン、ラーメン由来の糖質を減量することによって達成されるHbA1c低下は、米由来の糖質を減量するより2倍から4倍大きかった。私たちの結果は患者に効率的にHbA1cを低下させることができるだろう。
◆全訳
◇デザインと方法
・患者
◇結果
・治療前でのHbA1cおよび臨床的変数、6ヶ月間での変化、治療前での患者特性に応じた男女別のHbA1cの変化
・総糖質摂取量、各糖質源由来の糖質摂取量と6ヶ月間での男女別の変化
・男性における総糖質摂取量の変化および各糖質源由来の糖質摂取量の変化とHbA1c変化との関連
・女性における総糖質摂取量の変化および各糖質源由来の糖質摂取量の変化とHbA1cとの関連性
(文責 薬剤師 北澤雄一、医師 灰本 元)