日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

症例5 HbA1cは下がったが、LDLコレステロールが上昇した症例

症例 67歳 無職

現病歴
DM歴20年、食事と運動でなんとかなるだろうと通院しなかった。2007年春から右下肢痛、血管障害が不安になって、同年5月29日初診。初診時の身体所見血圧180/82、脈拍92/分、体重157cm、体重45.4kg、BMI:18.4検査所見: HbA1c8.9%、空腹時血糖値179mg/dl、LDL:159 mg/dl HDL:77 mg/dl TG:56 mg/dl、尿アル40.2 mg/g Cr(腎症Ⅱ期)、インスリン:2.0IU/ml、HOMA-R:1.08

治療方針と血管の評価
1.OGTT75gのインスリン分泌能はピーク18.3 IU/ml、AUC-insulin 23.3で低値。
2.CARD(朝と夕に炭水化物制限)から開始。
3.血圧:家庭血圧測定では早朝から就寝前まで120/70mmHg台、したがって外来では白衣高血圧なので降圧薬治療は不要。
4.末梢血管:末梢血管エコー:ABIに左右差なし、石灰化強い5。頸動脈の評価:総頸動脈のIMTは右/左=2.2/2.4mmで厚い。
5.心電図:虚血性変化なし

臨床経過
HbA1c、体重、血清脂質の推移をグラフで示した。投薬はなし。半年後の体重41.3kg、BMI: 16.7、HbA1c7.1%、空腹時血糖137 mg/dl、LDL:180 mg/dl
HDL:76 mg/dl TG:32 mg/dl。尿アル11.3 mg/g Cr、インスリン1.71 IU/ml , HOMA-R:0.60。 
食事調査(初診から半年後) 総摂取エネルギー:1793kcal、P:F:C=21:48:28%。炭水化物128g、蛋白質96g、脂質95g。

case_5LDL.jpg

その後の治療方針と経過
HbA1c、空腹時血糖、インスリン抵抗性は改善したが、血清脂質の改善はなかった。また、体重は減りすぎと考えられたので、その後SU剤少量を使い、CARDを1.5食制限へ緩める方針とした。

①少量のアマリールを投薬して、HbA1cをもう少し下げると同時に体重を増加させる。
②LDL高値に対してスタチンを投薬、目標は100-130くらい。
2008年5月からアマリール0。5mg、クレストール2。5mg内服開始。2008年6月からアマリール1mgへ増量2008年7月の体重48。1kg、HbA1c6.4%、LDL:81 mg/dl、HDL:77 mg/dl、TG33 mg/dl。その後、3年間HbA1c<7.0%を維持している。
2011年9月の投薬はメトグルコ1。5g、クレストール2.5mg、体重46.5kg(BMI: 18.9)
、LDL:103 mg/dl、HbA1c: 6.7%、尿中アルブミン13.8 mg/g Cr(腎症Ⅰ期へ改善)。

考 察
1.LDLコレステロールが上昇したが、HbA1c、体重、HOMA-Rは低下した症例で、このように糖尿病関連は改善しましたが、血清脂質はLDLコレステロール以外は正常範囲なので改善はなく、逆にLDLだけが上昇する症例はローカーボ食治療でもときに散見します。

2.当院から5つのローカーボ食による臨床研究3-24か月のローカーボ食による治療によって3つの研究ではLDLは有意に下がっています。残り2つの研究では前後で下がりましたが、有意差はなし。それぞれの患者群のLDLコレステロール平均値がローカーボ食治療後に上昇したことは当院ではありません。

3.当院の最近の2年間の新患症例でスタチンを使わなかった、つまり正常LDL群においては、一年後と初診時のLDLの差(ΔLDLコレステロール)はΔBMIと相関があって、BMIが減れば減るほど統計学的に有意にLDLも下がる傾向がありました。症例が100例を超えたらLDLコレステロールが下がる食事内容やその他のリスクファクターなどの要因分析をして英論文にまとめるつもりです。

4.一方、アメリカのハイカーボ食とローカーボ食の比較研究では共にLDLコレステロールは下がりませんが、ハイカーボ食に比べてローカーボ食ではLDL分子のサイズが大きくなるので、動脈硬化へは有利と考えられています。

5.このような痩せ糖尿病は日本では一般的です。そのような症例にローカーボ食がうまく機能して血糖コントロールに成功すると、体重はさらに減って、HbA1cやHOMA-Rも低下します。体重の減りすぎはローカーボ食の課題です。

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