日本ローカーボ食研究会

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52.血糖降下薬使用、血糖コントロールと重症低血糖の割合の2006年—2013年における動向

血糖降下薬使用、血糖コントロールと重症低血糖の割合の2006年—2013年における動向
Trends in Drug Utilization, Glycemic Control, and Rates of Severe Hypoglycemia, 2006–2013
Kasia J. Lipska (Yale School of Medicine, USA) et al.
Diabetes Care 2016 Sep; dc160985

目的:2型糖尿病患者における血糖降下薬の使用、血糖コントロール、重症低血糖の割合についてその動向を調査した。

研究と方法:2006年—2013年の、個人加入医療保険及び公的医療保険(Medicare Advantage)に加入している糖尿病患者166万人の給付金支払い記録を用い、1)年齢と性別を規格化し各クラスの薬剤を処方された患者の割合を;2)年齢、性別、人種、地域を規格化し各HbA1cレベル(<6%、6 ~ <7%、 7 ~ <8%、 8 ~ <9%、≧9%)の患者の割合を;3)年齢と性別を規格化し、薬物療法中の重症低血糖の比率を、年毎に推定した。割合は全体について計算し、年齢群(18–44歳, 45–64歳, 65–74歳, ≧75 歳)と合併症の数(0、1、2、それ以上)によって層別化した。

結果:2006年から2013年までの8年間に、メトフォルミンは47.6%から53.5%に、DPP-4阻害薬は0.5%から14.9%に、インスリンは17.1から23.0%に使用が増加した、しかし、SU剤は38.8%から30.8に、チアゾリジンは28.5%から5.6%に減少した(全てP < 0.001)。 HbA1cが7%未満の患者の割合は56.4%から54.2%へ減少し(P < 0.001)、9%以上のHbA1c値は9.9%から12.2%に増大した(P < 0.001)。
血糖調節は年齢によって異なり、2013年では最も若い患者の23.3%、最も高齢の患者の6.3%が調節不良であった。重症低血糖患者の割合は全体としては変わりなく(年間100人中1.3 %)、高齢患者では少し減少し(2.9%から2.3%に、P < 0.001)、2つまたはそれ以上の合併症のある患者では高止まりした(3.2 %から3.5%:に、P = 0.36)。

結論:最近8年の間で、2型糖尿病患者の血糖降下薬の使用は劇的に変った。しかし、全体として血糖調節に改善はみられず、若い患者の約4分の1は調節不良のままである。重篤な低血糖の割合は全体として大きな変化なく推移している。

読後感想:この研究によると、糖尿病治療薬は近年劇的な変化を見せているが低血糖の減少には寄与しておらず、HbA1c値の改善も見られません。SU剤の使用量は減少しているが依然としてメトフォルミンに次ぐ第2位で30%以上にのぼるのが実情です。これでは糖尿病の薬物治療が進化しているとは言えず、「薬価の高い糖尿病治療新薬の存在意義」が問われかねません。このような実情を製薬会社は知っておくべきだと思います。

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