日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

ゆるやかな糖質制限食を実行中の2型糖尿病の患者において、それぞれの糖質源によってHbA1cへの効果は異なっている

前書き
日本ローカーボ食研究会のメンバーによる臨床研究の成果が海外専門誌(Diabetes Metab J May 2021;45(3):390-403)に掲載されました。昨年すでにAhead-of Printとして公開され、ホームページに全訳を掲載していますが、2021年5月号に掲載となりました。
抄録を掲載して、簡単な解説を加えました。

Diabetes Metab J Published online Jul 21, 2020
Hajime Haimoto1, Shiho Watanabe2, Keiko Maeda3, Takashi Murase4, Kenji Wakai5
1 Department of Internal Medicine, 2 Division of Clinical Nutrition, Haimoto Clinic, Kasugai,
3 Department of Health and Nutritional Sciences, Faculty of Health and Sciences, Aichi Shukutoku University, Nagakute, 
4 Division of Endocrinology and Diabetes, Libra Sasashima Medical Clinic, Nagoya,
5 Department of Preventive Medicine, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan

ゆるやかな糖質制限食を行っている2型糖尿病患者においてそれぞれの糖質源はHbA1cへの異なる効果を持っている。
灰本 元(灰本クリニック内科)、渡邉志帆(灰本クリニック、臨床栄養科)、前田恵子(愛知淑徳大学健康栄養科学部)、村瀬孝司(リブラささしまクリニック内分泌糖尿病科)、若井建志(名古屋大学医学部予防医学)

背景
わたしたちは2型糖尿病の患者において、いろいろな糖質源を減少させることによって達成されるHbA1cの低下を研究した。


方法
私たちはゆるやかな糖質制限食を実行し、かつ糖尿病薬を服薬していない138人の男性、107人の女性外来患者を追跡した。糖質摂取量の変化(Δ糖質)は治療前と6ヶ月後の3日間食事日記から、それとHbA1cの変化(ΔHbA1c)との関係をスピアマン係数と重回帰分析を用いて評価した。


結果
ΔHbA1cは男で –1.5±1.6%、女で–0.9%±1.3%であった。一方、Δ総糖質はそれぞれ –115.3±103.7 g/日と–63.6±71.1 g/日であった。ΔHbA1cは男性でΔ総糖質、Δソフトドリンク由来糖質、菓子、米、パン、中華麺由来、女性ではΔ総糖質、米、菓子由来と正の関係があった(スピアマン順位相関)。重回帰分析によると、糖質源由来糖質50gの減少は、男の総糖質で0.43%、ソフトドリンクで1.33%、菓子で0.88%、パンで0.63%、中華麺で0.82%、米で0.34%のHbA1cを減少させた。女では総糖質で0.45%、菓子で0.67%、米で0.34%のHbA1cを低下させた。これら糖質源由来の糖質摂取量は米由来よりもはるかに少なかったにもかかわらず。


結論
ソフトドリンク、お菓子、パン、ラーメン由来の糖質摂取の減少によって達成されるHbA1低下は米由来糖質よりも2-4倍大きかった。わたしたちの結果は患者をして効果的にHbA1cを下げることを可能にする。
 

解 説
2014年に総糖質をどれだけ減らすととれだけHbA1cが下がるかを論文化して、それを応用(たとえば一日の総糖質を110g減らすとおよそ1.0%下がる)すると予想より下がりすぎる患者にしばしば出会いました。その原因はどの糖質源を減らすかによってHbA1cへの影響は異なるのではないか、という疑問が湧いてきました。
それを解決するためにこの研究が行いました。2014年の論文ではDM薬を服薬していた患者が含まれていたので、今回は治療3ヶ月前から治療後6ヶ月までまったく糖尿病薬を使わない患者で分析するという戦略を立てました。糖質制限だけの影響を知りたかったからです。しかし、これは他院から転院してきたときすでにDM薬を処方されている患者は臨床研究に組み込むことができないので、症例を集めるのに4年以上の歳月を要しました。
今回の結果を図1-5に示しました。

slide1s.jpg
図1

slide2s.jpg
図2

slide3s.jpg
図3

slide4s.jpg
図4

slide5s.jpg
図5

主要な結果(図4.5)だけでなく、図1と3には日本人糖尿病患者の糖質源別摂取量とその変化、ゆるやかな糖質制限食に伴う主要栄養素の変化などを掲載しました。
主要な結果は、米由来の糖質の摂取量は圧倒的に多いにもかからず(総糖質の4割)(図3)、米由来糖質50gを減らすとHbA1cへの影響は0.34%と最も少なくなりました。一方、ソフトドリンク由来糖質50g減少ではHbA1cの低下は1.33%、菓子で0.88%、パンで0.63%、中華麺で0.82%であって、米由来糖よりも2-4倍HbA1cがよく下がることがわかりました。
これらの成果は、米を3食とも温存しても他の糖質を減らせば目的のHbA1cを達成できること、つまり、さらにゆるやかな糖質制限食に道が開けることになりました。

(文責 灰本クリニック 医師 灰本 元)
 

おすすめコンテンツ

賛助会員

協賛医療機関

医療法人芍薬会灰本クリニック むらもとクリニック 内科・漢方 安井医院