日本ローカーボ食研究会

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2021年、私たちのゆるやかなローカーボ食(2)

糖質を多く含む食品管理から糖質グラム管理へ

 2004年ローカーボ食を2型糖尿病患者に開始した当時、私たちの方法は重症度に応じて糖質制限の強さを調整するというものであった。当時、このような方法を使った臨床家や研究者は世界になかった。

科学的な根拠はないにせよ、数例の患者にとりあえず導入した経験を基に、軽症も重症もみそくそにして厳しい制限をしなくても効果が期待できると直感的に思えた。そして、図1のように初診時のHbA1cに応じて、朝昼夕食から(3CARD)、朝夕食から(2CARD)、夕食だけ(1CARD)糖質を完全に抜くという3段階制限で糖質制限食の栄養指導を開始した。

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患者へは糖質を多く含む食品一覧とそれを使ったメニューを渡して、あとは朝昼夕食のどこで抜くか、脂質をたくさん食べよ、小腹が空いたときに食べる糖質が少ない間食一覧(とはいってもナッツ類、ゆで卵、スルメなどとてもおやつとは言えない)を渡して指導するだけの単純なものだった。つまり、糖質を多く含む食品の管理という指導方法であり、小難しい計算は必要なかった。それでも、そのHbA1c低下効果はめざましく、およそ150人の中等症糖尿病患者をまとめて2008年にDiabet Res Clin Practへ、33人の重症糖尿病患者の効果はNutr Metab 2009年に発表した。
この方法の利点は、当時この食事療法を患者は誰1人も知らなかったにもかかわらず、比較的容易に患者が受け入れてくれるほどの“易しさ”を持っていたことにある。面倒なカロリー計算もないし、毎日食べている糖質が多い食品を覚えればよいので多少の認知症があっても理解できたのである。そして、効果も重症度に応じてHbA1cや血糖は見事に下がっていったので患者は一様に驚いて満足げであった。一方、栄養指導から見た課題は、下がりすぎたとき、あるいは予想通りに下がらなかったとき、2 CARDからいきなり1CARDへがくっと緩めること、逆に2CARDから3CARDへと極めて厳しい糖質制限になってしまうことで、その中間どころがなかった。
この課題は次の疑問に発展していった。いったい糖質を何グラム制限するとどのくらいHbA1cが下がるのだろうか? それが分かれば糖質のグラムを細かく管理してHbA1c低下を予想できる。つまり、ちょっとは科学的で自慢ができる指導法が完成すると思ったのである。2010年頃、この疑問に応えるためにはローカーボ開始前とHbA1cが目標値に達したときの糖質摂取量とHbA1cのそれぞれの値とそれらの差が重要と気がついた。2011年までの4編の論文は治療後の糖質摂取量しか調べてなかったのである。2010年から2014年までに治療前後の食事日記とデータを122例を集めた。解析の結果、図2のような結果をはじき出した。これは当時の私たちの毎日の臨床から納得できる予想通りの結果で、2014年Nutr Metabに発表した。

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図2のGroup1患者(軽症55人、治療前平均HbA1c6.9%)では治療前の平均糖質摂取量一日252gから74g糖質を減らすとHbA1cはおよそ0.4%、Group 2(中等度41人、8.1%)では282gから117g減らすと0.6%、Group3(重症26人、10.6%)では309gから156g減らすと3.0%もHbA1cは下がった。だだしGroup 2ではDM薬服薬患者は25人から13人に半減しているので、薬を飲んでいない患者に限定すると1.1%も下がっていた。すわなち、糖尿病薬を減らしながらこれだけの成果を得られたのだった。
 しかし、この結果は完全に満足できるものではなかった。それは、糖尿病薬を使っている患者が半数含まれていたので、糖質減少量とHbA1c低下量の直接的な関係を正確に説明できたとは言えないからであった。この課題を乗り越えるためには、糖尿病薬を初診時から使っていない患者で治療中も薬を使わないでHbA1cがどのくらい下がるか調べるしか方法はなかった。
・2021年、私たちのゆるやかなローカーボ食(3) -総糖質量から個々の糖質源の管理へ-

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