超加工食品の消費と癌の発症リスク:NutriNet-Santeの前向きコホートの結果
Consumption of ultra-processed foods and cancer risk: results from NutriNet-Sante prospective cohort
Thibault Fiolet et al. BMJ 2018;360:k322 | doi: 10.1136/bmj.k322
【背景】
超加工食品の消費と癌の発症リスクとの見込まれる関連性を評価する。
【試験デザイン】
地域住民を対象としたコホート研究
【設定・参加者】
参加者はフランスのNutriNet-Santeコホート研究(2009-2017)からの18歳以上(年齢中央値:42.8歳)の104980人。摂取食品の情報は、反復24時間食事記録を用いて収集し、3300の様々な食品に対する参加者の普段の消費量を記録するようにデザインした。これらの食品はNOVA分類を用いて加工の程度に応じて分類した。
【主要評価項目】
超加工食品と全癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌との関連性は、多変量コックス比例ハザードモデルを用いて、これまでに知られているリスク因子で調整して評価した。
【結果】
超加工食品の摂取増加、つまり食品中の超加工食品の比率10%増加に対して全癌(n=2228)ではHR: 1.12 [95%CI: 1.06-1.18]; P<0.001)と乳癌(n=739; HR: 1.1 [95%CI: 1.02-1.22]; P=0.02)のより高い発症リスクと関連していた。これらの結果は、食品の栄養学的特性に関する様々なマーカー(脂質、ナトリウム、炭水化物の摂取および主成分分析を由来とする西洋型食生活の両方あるいはいずれか一方)で調整した後も統計学的に有意なままであった。
【結論】
この大規模前向きコホート研究では、摂取する食品中の超加工食品の比率10%の増加は、全癌および乳癌の発症リスク10%以上の有意な増加と関連していた。これらの関連性について超加工に関する様々な面(栄養成分、食品添加物、包装材料、新たに形成された汚染物質)の相対的な効果を理解するために更なる研究が必要とされる。
【読後感想】
超加工食品とは塩、砂糖、油脂に加え料理には使用されない物質を含み、工業的に形成されたもの、きっちりと包装されて日持ちもよい食品のことである。例としては、大量生産され包装されたパン、甘味・塩味のスナック、工業的に作られた菓子類とデザート、炭酸飲料や加糖飲料、ミートボール・チキンナゲット、保存料を添加した肉加工品、カップ麺、冷凍食品、出来合いの食品などが挙げられる。現在はこれらの食品が簡単に手に入る世の中になり、口にする機会も増えている。さらにローカーボダイエットなどの普及で、主食となる炭水化物が減る分これらの食品の摂取が増える可能性もある。完全にこのような食品を除くことは難しいため、利用するにしてもなるべく加工過程が少ないものを選ぶように気をつけないと、いつの間にか癌になるリスクを上げてしまっているかも知れない。多少手間はかかるものの、手作り料理が一番健康に良いということであろう。
(薬剤師 松岡武徳)