日本ローカーボ食研究会

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207.2型糖尿病患者におけるリスク因子、死亡率、心血管転帰

Risk Factors, Mortality, and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes.
Aidin Rawshani et al. N Engl J Med 2018; 379:633-644. DOI: 10.1056/NEJMoa1800256.

和訳

【背景】
 糖尿病患者は、一般集団よりも死亡と心血管転帰のリスクが高い。2型糖尿病患者における死亡および心血管イベントの超過リスクを低減または排除することができるかどうかを調査した。

【方法】
 コホート研究で、スウェーデン全国糖尿病登録において登録された2型糖尿病患者271174名を対象とし、対照群1355870名と年齢、性別、地域をマッチさせた。糖尿病患者を年齢分類と5つのリスク因子(糖化ヘモゴロビン値の上昇、低比重リポ蛋白コレステロール値の上昇、アルブミン尿、喫煙、血圧の上昇)の有無に従って評価した。コックス回帰を用いて、喫煙および目標範囲外の項目の数と関連する転帰(死亡、急性心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院)の超過リスクを調査した。様々なリスク因子と心血管転帰との関連性についても検討した。

【結果】
 参加者全体の追跡期間中央値は5.7年で、その期間に175345例の死亡が発生した。2型糖尿病患者では、転帰の超過リスクは目標範囲内にあるリスク因子の項目それぞれにつき段階的に減少した。5項目全てが目標範囲内にある糖尿病患者では、対照群と比較して、全死因死亡のハザード比は1.06(95%CI、1.00-1.12)、急性心筋梗塞は0.84(95%CI、0.75-0.93)、脳卒中は0.95(95%CI、0.84-1.07)であった。心不全による入院のリスクは、一貫して対照群より糖尿病患者の方が高かった。(HR、1.45;95%CI、1.34-1.57)2型糖尿病患者において、目標範囲外にある糖化ヘモグロビン値は脳卒中および急性心筋梗塞に対する最も有力な予測因子であり、喫煙は死亡に対する最も有力な予測因子である。

【結論】
 5つのリスク因子が目標範囲内の2型糖尿病患者は、一般集団と比較して死亡、心不全、脳卒中の超過リスクはほとんどないか、全くない。(スウェーデン地方自治体協会ほかから研究助成を受けた。)

Type_2_Diabetes1.png
脳卒中の転帰をたどった人のリスク要因(HbA1cが一番リスクの上位にきている)

【読後感想】
 内科系ではトップクラスのIFを持つNEJMの論文なので読んでみようと思い抄読会に出したが、ほかの先生方からの意見を聞き見方が変わると結果の意味合いも変わってくると思った。
 まず、論文の内容を素直に読んでいくと5つのリスク要因を目標値に入れれば糖尿病患者でも一般人とリスクは上がらないといった結論になる。しかし実際の臨床感覚と違う点もあり、本研究は追跡期間が5.7年だが実際には10年ぐらい追いかけないと糖尿病の死因の大部分で問題となる癌については把握できない。今回の論文でも転帰に癌が入ってないので実臨床に使えるかと言われると厳しい。
 さらに脳卒中での転帰に関して一番のリスク要因となるのが、ほかの論文などでも言われている高血圧ではなく、HbA1cだったこともこのデータを素直に信じていいか疑問が深まる。そもそもスウェーデン人での研究なので、日本人にはあてはまらないかもしれない。
 見方を変えるとトップクラスの雑誌に載った論文でも不十分な研究に思えてくるので、たくさんの人の意見を聞きながら論文を読むことの大事さが分かった。

(薬剤師 松岡武徳)

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