日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

18.世界の異なった地域における2型糖尿病患者に対する血糖値の厳格管理と標準管理の効果

HbA1cを8%台から7.5%まで下げても6.5%まで下げても総死亡は変わらない:大規模臨床介入研究メタアナリシス
世界の異なった地域における2型糖尿病患者に対する血糖値の厳格管理と標準管理の効果:システマティック・レビューと無作為化臨床試験のメタ解析
Effect of Intensive Versus Standard Blood Glucose Control in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus in Different Regions of the World:
Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials
Partha Sardar, MD et al.
J Am Heart Assoc. (2015) 4:e001577 doi: 10.1161/JAHA.114.001577

背景:2型糖尿病治療の地域による違いが、厳格対標準的な血糖コントロールを受けた患者で、治療結果に影響を与える可能性がある。北アメリカとその他の地域との差を評価すべく探求した。

方法および結果:データベースをその初めから2013年12月まで検索した。成人2型糖尿病患者に対しての厳格治療および標準治療による、大血管障害および細小血管障害に対する効果を比較するランダム化比較試験を選択した。ランダム効果モデルを用いて総合的オッズ比(ORs)と95%信頼区間(CIs)を計算した。この分析は17のランダム化比較試験(7編は北アメリカ、10編はその他の地域)から34,967人の患者を組み込んだ。総死亡(オッズ比1.03、95%信頼区間0.93~1.13)と心血管死(オッズ比1.09、95%信頼区間0.90~1.32)については厳格治療群と標準治療群の間に有意差はみられなかった。北アメリカで行われた試験の血糖調節の標準治療に比べた厳格治療は、総死亡(オッズ比1.21、95%信頼区間1.05~1.40)と心血管死(オッズ比1.41、95%信頼区間1.05~1.90)がその他の地域で行われた試験(総死亡オッズ比0.93、95%信頼区間0.85~1.03、交互作用P=0.006、心血管死オッズ比0.89、95%信頼区間0.79~1.00、交互作用P=0.007)に比してかなり高かった。個々の大血管障害および細小血管障害の結果の分析からは、有意な地域差はみられなかった;しかしながら、北アメリカでの厳格治療による重症低血糖のリスクは(オッズ比3.52、95%信頼区間3.07~4.03)その他の地域でのリスク(オッズ比1.45、95%信頼区間0.85~2.47、交互作用P=0.001)に比して著しく高かった。

結論:北アメリカでの、2型糖尿病患者に対する厳格な血糖コントロール割り付けの無作為化が、その他の地域に比した総死亡、心血管死、重症低血糖の増加につながっていた。こういった所見に内在する、病理生物学的差異ないし患者の差異についてのさらなる研究は然るべきといえる。

読後感想
 本編以前に発表されたメタアナリシスでは、厳格治療が標準治療に優る点は、大血管障害のうち非致死性心筋梗塞発症の減少、細小血管障害のうち、主に微量アルブミン尿発症の減少といった、比較的限定的なもので、しかも標準治療との差はわずかであった。厳格治療によって総死亡や心血管死の増加はみられないものの、重症低血糖は厳格治療によって有意に増加することがわかっていた。そこで本編では、従来のメタアナリシスと異なり、全体を2群にわけて解析している。北アメリカの試験(ACCORD、VADTなど)ではその他の地域の試験に比して全体的に初期HbA1c値が高く、北アメリカの試験の厳格治療レジメには無理があり、それによって総死亡、心血管死、重症低血糖の増加につながったことを示した。同時に、その他の地域の試験のように、比較的軽症例をゆっくりコントロールするならば、標準治療に比べて厳格治療による重症低血糖リスクの有意な増加もなく、細小血管障害抑制の利点が生きることを示唆したという意味で、有意義なレポートである。(医師 村元秀行)

おすすめコンテンツ

賛助会員

協賛医療機関

医療法人芍薬会灰本クリニック むらもとクリニック