37.高齢の2型糖尿病患者における低血糖の発症と認知症のリスク
高齢の2型糖尿病患者における低血糖の発症と認知症のリスク
Hypoglycemic Episodes and Risk of Dementia in Older Patients With Type 2 Diabetes Mellitus
Whitmer, R.A. et al.
JAMA (2009) 301: 1565-1572
背景:急性低血糖が1型糖尿病の小児で認知機能障害と関連することがあるにもかかわらず、高齢の2型糖尿病患者で低血糖が認知症のリスクファクターであるかどうかを評価した研究はこれまでなかった。
目的:入院を必要とするような重篤な低血糖症状の発症が、2型糖尿病の高齢者集団において認知症リスクの上昇と関連しているかどうかを27年間のフォローアップにより特定すること。
デザイン、セッティング、患者:北カリフォルニア総合在宅健康管理システムのメンバーで平均年齢65歳2型糖尿病患者の16,667人について1980年から2007年に至る縦断的コホート研究。
主要評価指標:1980年—2002年の低血糖発作の症例を集め、退院および救急部における診断の記録を利用して調査した。2003年1月の時点ですでに認知症、軽度認知機能障害、一般的な記憶不良と診断されていないコホート集団について、2007年1月15日まで認知症の診断を追跡した。認知症のリスクはCOX比例ハザード回帰モデルを使用し、年齢、性別、人種、教育、BMI、糖尿病の期間、7年間の平均糖化ヘモグロビン、糖尿病治療、インスリン使用期間、高脂血症、高血圧、心血管疾患、脳卒中、一過性脳虚血、末期腎不全を補正した。
結果:フォローアップ中、少なくとも1回の低血糖発作が1465人の患者(8.8%)で診断され、1822人の患者(11%)が認知症と診断された;250人の患者は認知症と少なくとも1回の低血糖発作の両方があった(16.95%)。低血糖が無かった患者と比べ、1回もしくは複数回の発作があった患者では十分補正したハザード比について段階的なリスクの上昇があった:1回の発作ではハザード比は1.26(95%信頼区間1.10–1.49)、2回の発作では1.80(95%信頼区間1.37–2.36)、3回もしくはそれ以上のばあいは1.94(95%信頼区間1.42–2.64)。低血糖歴の有る無しに帰することの出来る認知症のリスクは2.39%╱年(95%信頼区間, 1.72%–3.01%)だった。医療の利用頻度、健康計画のメンバーである長さまたは最初に糖尿病と診断されてからの時間を回帰モデルに加えてもリスクは減少しなかった。低血糖による救急入院を受け入れた535例についても認知症リスクとの関連を調査したが、結果は低血糖発作の無い場合と比較した完全補正ハザード比についても同様だった,1度の低血糖発作のハザード比は1.42 (95%信頼区間1.12–1.78) そして2回以上の発作では2.36(95%信頼区間1.57-3.55)だった。
結論:2型糖尿病高齢患者の中で、重篤低血糖の病歴はより大きな認知症のリスクと関連していた。軽症の低血糖発作が認知症のリスクを上昇させるかどうかはわからない。