日本ローカーボ食研究会

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16.パロキセチンとイミプラミンの青年期の大うつ病治療における効能と害

常識が覆る その4:再解析でパキシル無効,10年前の有効論文は間違い!!
復元研究329: パロキセチンとイミプラミンの青年期の大うつ病治療における効能と害
Restoring Study 329: efficacy and harms of paroxetine and imipramine in treatment of major depression in adolescence
Joanna Le Noury, John M Nardo, David Healy, Jon Jureidini, Melissa Raven, Catalin Tufanaru, Elia Abi-Jaoude
BMJ (2015) 351:h4320 | doi: 10 .113 6/bmj.h4320

目的:SmithKline Beechamの研究329(2001年にKellerと同僚が論文発表)について再度解析することで、主要な目的は単極性大うつ障害の若者の治療においてパロキセチンとイミプラミンの効能と安全性を偽薬(プラセボ)と比較して再分析すること。表に現れないか未公表の臨床治験の復元(RIAT)の取り組みで、無作為化対照試験の全データセットにアクセスし、その再分析が根拠に基づく医療(evidence based medicine)にとって臨床的に妥当な意味があるかどうかを検証するために行った。

方法:二重盲検無作為化プラセボ比較試験

設定:1994年4月20日~1998年2月15日の間で、12の北米学術精神医学センターのデータ。

対象者:少なくとも8週間続く大うつ病と診断された275名の青年。合併性の精神・医学障害の範疇に入る者と自殺傾向者は除外した。

介入:対象者は無作為化して、パロキセチン(20〜40 mg)、イミプラミン(200〜300 mg)、または偽薬により8週間の二重盲検治療をした。

主要評価尺度:予め指定した第1次の有効変数は、開始から8週間の急性期治療の終了までの総ハミルトンうつ病尺度(HAM-D)と、終了時点の治療応答者(HAM-D スコア≦8, または 50%≧の減少)の割合の基準値からの変化とした。
予め指定した第2次のアウトカムは、K-SADS-L、臨床全般の印象、自主的な機能チェックリスト、自己認識プロファイル、および疾病影響スケールにおけるうつ項目の治療終了時点におけるベースラインからの変化;応答予想スケール;および経過観察中に再発した患者数。
有害事象は、主に記述統計を用いて比較することにした。事象のコード化の辞書は事前に指定しなかった。

結果:パロキセチンおよびイミプラミンの有効性は、予め指定しておいた第一次および第二次評価項目共に偽薬(プラセボ)との間に統計的にも臨床的にも有意差は無かった。HAM-Dスコアは、パロキセチン、イミプラミンおよびプラセボ群(P=0.20)においてそれぞれ、10.7(最小二乗平均)(95%信頼区間:9.1-12.3)、9.0(95%信頼区間:7.4-10.5)、9.1(95%信頼区間:7.5-10.7)ポイント減少した。パロキセチン群では自殺を考え実行することや他の重篤事情を含む有害事象が臨床的に重大な増加を示した。またイミプラミン群では心血管障害が問題となる増加を示した。

結論:パロキセチンも高用量イミプラミンのどちらも青年の大うつ病治療に有効性を示さず、両薬剤ともに有害性の増加を示した。試験の一次データへのアクセスは、臨床的実践においても研究においても重要な意味を持つが、すでに論文発表されている有効性と安全性についての結論は権威あるものとしてとして鵜呑みにすべきではない。復元研究329は、根拠の厳密さを増すために試験の一次データやプロトコルを利用できるようにする必要性を明確に示している。

読後感想
 最近、医薬品の長期服用による弊害や服用すること自体に対して疑問符が付く論文が色々と発表されるようになってきた。今回紹介する論文は、従来大うつ病の治療に効果があると信じられてきたパキロセチン(パキシル錠®)とイミプラミン(トフラニール錠®)その大うつ病に対する効果が実は偽薬(プラセボ)と有意差がなく、逆に有害事象が増えてしまうと言う本末転倒の結果を示している。これは相当ショッキングな結果であり薬物治療の根幹を揺さぶる結果ではないだろうか?このような論文の数が増えるにつれ、これまでの医薬品開発にメーカー側の何らかの思惑が影を落としているように感じられてならない。(薬剤師 加藤 仁)

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