204.閉塞性睡眠時無呼吸の治療はカテーテルアブレーション後の心房細動再発のリスクを低減する
Treatment of Obstructive Sleep Apnea Reduces the Risk of Atrial Fibrillation Recurrence After Catheter Ablation
J Am Coll Cardiol. 2013 Jul 23;62(4):300-5. doi: 10.1016/j.jacc.2013.03.052.
要約
【目的】
本研究の目的は,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の肺静脈隔離(PVI)患者における,心房細動(AF)再発に対する持続気道陽圧(CPAP)療法の効果を調べることである.
【背景】
OSAはPVI後のAF再発の予測因子である.しかし,OSA患者のPVI転帰に対するCPAP療法の影響はあまり知られていない.
【方法】
2007年から2010年の間にPVIを受けた患者426人のうち,62人の患者が睡眠ポリグラフで確認されたOSAの診断を受けていた.32人の患者は「CPAP利用者」であったが,残りの30人の患者は「CPAP非利用者」であった.心房頻脈性不整脈の再発,抗不整脈薬の使用,および反復アブレーションの必要性を12ヶ月のフォローアップ期間中に群間で比較した.さらにOSA患者の転帰と,OSAのない同じPVIコホートの患者群とを比較した.CPAP療法は高いAF非再発生存率(65.6%対33.3%,p = 0.02)およびPVI後の抗不整脈薬または反復アブレーションの要らない高いAF非再発生存率(71.6%対36.7%,p = 0.01)をもたらした.CPAPで治療した患者のAF再発率はOSAのない患者群(HR:0.7,p=0.46)と類似していた,CPAP非使用患者におけるPVI後のAF再発は有意に高く(HR: 2.4, p<0.02),アブレーションなしで医学的に管理されたOSA患者のそれと同様であった(HR:2.1,p = 0.68).
【結論】
CPAPは不整脈のない生存率を改善するPVIを受けているOSA患者における重要な治療法である.PVIはCPAPで治療されていないOSA患者に限定された価値を提供する.
【感想】
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とアブレーション後の心房細動(Af)再発率に言及したおそらく初めての論文である.2018年には2編のメタアナライシス(J Evid Based Med. 2018 Aug;11(3):145-151,Sleep Med. 2018 Jun;46:5-11)も発表されており,前者の論文では,SAS合併でアブレーション後の心房細動再発率が1.70倍となり,CPAPの使用により再発が0.28倍に減少した.後者の論文ではCPAP使用によりアブレーション後の心房細動再発が0.6倍に減少していた.これらの結果により,SASと心房細動再発率との関係はほぼ間違いないであろう.その予防には経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)が有効であり,初回の心房細動を診断したときはアブレーション前にSASの有無をチェックすることをルーチン化すべきと考える.ここ数年,世界的にCPAPの有効性が疑問視されているが,こと心房細動に関しては有効と言わざるを得ない.