日本ローカーボ食研究会

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28.初期に適切な抗生剤治療を受けた肺炎患者の30日死亡率に対するリスク要因

2つ以上のリスク要因のある肺炎患者は死亡リスクがより高い!
初期に適切な抗生剤治療を受けた肺炎患者の30日死亡率に対するリスク要因:
観察コホート研究
Risk factors for 30-day mortality in patients with pneumonia who receive appropriate initial antibiotics: an observational cohort study. Y. Shindo, et al  Lancet Infect Dis (2015) Published on line July 3, 2015

背景:初期の適切な抗生剤治療は感染症の治療では非常に重要である。しかし、適切な治療を受けているにも拘わらず中には治療効果が上がらない肺炎患者がいる。我々は適切な初期治療を受けた肺炎患者における30日死亡率を明らかにし、補助的な治療で効果があがりそうな患者を見定めることにした。

方法:2010年3月15日から12月22日までの期間で10の医療機関における肺炎の入院患者(20歳以上)について前向き観察研究を行った。30日死亡率に対するリスク要因を評価する目的で、オッズ比と95%信頼区間を算出するための多変量ロジスティック回帰分析を行った。この研究はUMINに登録された(番号UMIN 000003306)。

結果:30日死亡率は適切な抗生剤治療を受けたグループでは11%(579名のうち61名)、そうでないグループでは17%(168名のうち29名)であった。アルブミン濃度30mg/L未満(OR 3.39, 95%CI 1.83-6.28)、歩行困難な状態(OR 3.34, 95%CI 1.84-6.05)、血液pH7.35未満(OR 3.13, 95%CI 1.52-6.42)、呼吸数30回/分以上(OR 2.33 95%CI 1.28-4.24)、BUN 7.14mmol/L(20mg/dL)以上(OR 2.20 95%CI 1.13-4.30)は初期に適切な抗生剤治療を受けた患者においてそれぞれが独立したリスク要因であった。30日死亡率はそれぞれリスク要因が1つもない患者で1%(126名のうち1人)、1つで1%(168名のうち2人)、2つで17%(137名のうち23名)、3つで22%(89名のうち20名)、4つもしくは5つで44%(32名のうち14名)であった。

解釈:初期に適切な抗生剤治療を受けているにも拘わらず、2つ以上のリスク要因のある肺炎患者はリスク要因が1つもないか1つの患者と比較すると死亡リスクがより高い。そのため2つ以上リスク要因のある患者においては治療効果を良くする為に補助的な治療が重要と思われる。

読後感想:この観察コホート研究によって肺炎治療においては抗生剤治療のみならず、栄養状態や呼吸器機能の状況、脱水の有無などのリスク要因に対する補助的な治療についても並行して行うことの重要性を示唆している。特に高齢者における肺炎治療には十分留意する必要があるだろう。(薬剤師 北澤雄一)

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