4.2型糖尿病における高血圧治療
糖尿病患者のHbA1cを下げるよりも,収縮期血圧を10下げることによって…
「2型糖尿病における高血圧治療:システマティック・レビューとメタ解析」
「Blood Pressure Lowering in Type 2 Diabetes A Systematic Review and Meta-analysis
(Emdin, C. A. HBSc et al. JAMA (2015); 313:603-615)」
要点:高血圧の治療は、糖尿病患者で血管疾病のリスクを減らすために広く行われている。
目的:2型糖尿病における高血圧治療と血管疾患との関係を特定する。データの出典と研究法の選択:糖尿病患者を含む高血圧治療の大規模無作為化対照試験を、MEDLINの1966年1月から2014年10月までの出版分について検索した。
データの抽出と統合:2人のレビュアーがそれぞれに研究の特徴や血管疾病治療のデータを抽出した。評価では、治療前後の血圧によって層別化し、Fixed-effect model(母数模型)を用いたメタ解析によりデータを集めた。
主要評価項目:総死亡、心血管イベント、冠動脈疾患イベント、脳卒中、心不全、網膜症、アルブミン尿の発症あるいは悪化、腎機能障害
結果:解析に偏りを生む危険度が低いと判定される40件の試験(参加者100,354名)を含めた。収縮期血圧10mmHgの降圧は、以下の項目の有意なリスク低下と相関があった。
総死亡 (RR, 0.87[95%CI,0.78-0.96]; ARR, 3.16[95%CI,0.90-5.22])
心血管イベント(RR, 0.89[95%CI,0.83-0.95]; ARR, 3.90[95%CI,1.57-6.06])
冠動脈疾患(RR, 0.88[95%CI,0.80-0.98]; ARR, 1.81[95%CI,0.35-3.11])
脳卒中(RR, 0.73[95%CI,0.64-0.83]; ARR,[4.06;95%CI,2.53-5.40])
アルブミン尿(RR, 0.83[95%CI,0.79-0.87]; ARR, 9.33[95%CI,7.13-11.37])
網膜症(RR, 0.87[95%CI,0.76-0.99]; ARR, 2.33[95%CI,0.15-4.04])
但し、RR: relative risk、ARR: absolute risk reduction/ 1000 patient-year。
臨床研究を、収縮期血圧が140 mmHg以上か以下で分けた平均ベースライン収縮期血圧で層別化すると、脳卒中、網膜症、腎機能障害以外の評価項目はベースラインが高い場合にはRRはより低下し(p interaction<0.1)。血圧降下治療と評価項目との関係では、脳卒中、心不全を除き、薬剤の種類による差違いは見られなかった。解析に偏りがあるなしに関わらず、全ての臨床試験結果はよく似ていた。
結論:関連事項:2型糖尿病患者で、高血圧の治療と死亡率の改善及び血圧が140 mmHg以上の患者群で見られる他の疾患疾病にかかる危険率の低下とのあいだに相関が見られた。これらの結果は、2型糖尿病患者に対する高血圧の薬物療法が有益である事を示している。