210.膝関節症患者における薬物治療と長期の疼痛管理との関連性:システマティックレビューとメタ解析
Association of Pharmacological Treatments With Long-term Pain Control in Patients With Knee Osteoarthritis : A systematic Review and Meta-analysis
Dario Gregori et al. JAMA.2018;320(24):2564-2579.doi:10.1001/jama.2018.19319
【重要点】
骨関節炎は慢性かつ進行性の疾患であるが、行われる研究の大部分が短期間での研究であり、長期にわたる疾患管理に対する勧告は不明確である。
【目的】
膝関節症に対する薬物治療のランダム化比較試験(RCTs)より長期間(12か月以上)でのアウトカム(症状、関節構造)を検索し、レビューおよび解析する。
【データ源、試験選択】
膝関節症に対して1年以上治療および経過観察を継続した患者を対象としたRCTsを引用するためにMEDLINE、Scopus、EMBASE、Web of Science、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどのデータベースを2018年6月30日まで(MEDLINEについては2018年8月31日まで)検索した。
【主要評価項目、方法】
主要評価項目は、ベースラインからの膝関節痛の変化であった。また副次評価項目は身体機能および関節構造(関節腔狭窄として放射線学的に測定)であった。Standardized mean differences(SNDs)およびmean differencesを95%信頼区間(95%CrIs)と共に算出した。解析結果は95%CrIsがゼロを含まない場合に関連ありと判断した。
【結果】
47のRCTs(22037人の患者を含み、平均年齢の範囲は55-70歳、男女の割合は女性が約70%で男性より多かった)には以下の薬剤による薬物治療が含まれた。鎮痛薬、抗酸化剤、ビスフォスフォネートやラネル酸ストロンチウムなどの骨に作用する薬剤、非ステロイド性抗炎症薬、ヒアルロン酸やコルチコステロイドなどの関節内注射、グルコサミンやコンドロイチン硫酸などの骨関節炎において緩徐に作用する薬剤、cindunistatやspriferminなどの疾患修飾薬。介入研究のうち31が疼痛に関するものであり、13が身体機能、16が関節構造に関するものであった。試験期間は1年から4年の範囲であった。疼痛の改善との関連が認められたのは、非ステロイド性抗炎症薬のセレコキシブ(SMD, -0.18[95%Crl, -0.35--0.01])およびグルコサミンと(SMD, -0.29[95%Crl, -0.49--0.09])であったが、プラセボと比較して全ての推定値に対して大きな不確かさが存在した。疼痛の軽減との関連が有意なままであったのは、データが0から100の尺度に基づく平均差(MD)を用いて解析した場合、および高いリスクバイアスを除外した試験であった場合のみであった。関節腔狭窄の改善との関連が認められたのは、グルコサミン(SMD, -0.42[95%Crl, -0.65--0.19])、コンドロイチン(SMD, -0.42[95%Crl, -0.65--0.19])、ラネル酸ストロンチウム(SMD, -0.20[95%Crl, -0.31--0.07])であった。
【結論、関連性】
膝関節症患者を対象とし、少なくとも12か月間の追跡を行った試験のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析では、プラセボと比較してあらゆる疼痛の変化に対する効果量の推定値には不確実性が含まれていた。膝関節症に対する薬物治療の効果に含まれる不確実性を解明するためにはより大規模なRCTsが必要とされる。
【読後感想】
膝関節症は、高齢者の多くが抱える疾患のひとつであり、その薬物療法の評価は大変難しい。それゆえに長期での疾患管理に対する勧告を不明確なものとしている。疼痛管理に対してはセレコックスのようなNSAIDsが有効であるが、同時に長期にわたって服用を続けることによる弊害を考える必要がある。それらの服用は短期間かつ頓服とするべきであり、長期服用では有害性が有益性を上回る可能性があるため推奨されない。グルコサミンやコンドロイチンは、サプリメントとして広く流通しており、簡単に入手できるため高齢者の多くが服用しているが、その薬理作用は不明であり、個人的にその効果に対しては懐疑的である。効果サイズの推定値における不確実性の存在により、このメタ解析だけで長期での膝関節症に対する薬物療法を評価することは難しい。
(薬剤師 北澤雄一)