81.糖尿病治療薬を非服用の日本人2型糖尿病患者における炭水化物およびその由来食品のHbA1c値に対する影響
The impact of carbohydrate intake and its sources on hemoglobin A1c levels in Japanese patients with type 2 diabetes not taking anti-diabetic medication
Hajime Haimoto et al. Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity: Targets and Therapy 2018:11 53–64
Abstract
【背景】
食後血糖値は主に炭水化物の摂取量に依存するが、2型糖尿病患者における炭水化物およびその由来食品のHbA1c値に対する影響は、これまで行われた研究では証明されていない。おそらくそれは患者の半数以上が糖尿病治療薬を服用していることと、研究者が炭水化物摂取量の指標として総摂取カロリーに対する炭水化物の割合(%)を用いていることが原因である。
【患者・方法】
この研究には糖尿病治療薬を服用しておらず、また食事療法を実施していない2型糖尿病と診断された日本人の男性125名(平均年齢58±12歳)および女性104名(平均年齢62±10歳)を採用した。炭水化物およびその由来食品の総摂取量を調査するために3日間の食事日記を利用した。それをもとにSpearmanの順位相関係数を算出し、男女別の炭水化物の摂取量とHbA1cとの関連性を明らかにするために重回帰分析を行った。
【結果】
HbA1cおよび炭水化物の総摂取量の平均値は、それぞれ男性で8.2%±1.9%、272.0±84.6g/日であり、女性では7.6%±1.3%、226.7±61.5g/日であった。炭水化物の総摂取量(g/日)とHbA1cとの間には男性(rs=0.384)でも女性(rs=0.251)においても正の相関があることを認めたが、総摂取カロリーに対する炭水化物の割合(%)ではHbA1cとの間に男女共に相関は認められなかった。炭水化物の由来食品で見ると、HbA1cと正の相関があるのは、男性では麺類(rs=0.231)およびソフトドリンク(rs=0.325)であり、米とは相関がなかった。女性では米(rs=0.317)との間には正の相関があったが、麺類およびソフトドリンクとは相関がなかった。男性においては、炭水化物の総摂取量(g/日)およびソフトドリンク由来の炭水化物とHbA1cとの正の相関は、重回帰分析による総摂取カロリーでの調整後であっても有意なままであった。
【結論】
この研究結果は、2型糖尿病患者においてHbA1cを効率よく下げるために、炭水化物およびその由来食品や性別に着目した緩やかな低炭水化物食に対する介入研究が必要であることを正当化する。