日本ローカーボ食研究会

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59.米国における食物と心疾患、脳卒中、2型糖尿病による死亡との関連性

米国における食物と心疾患、脳卒中、2型糖尿病による死亡との関連性
Association Between Dietary Factors and Mortality From Heart Disease, Stroke, and Type 2 Diabetes in the United States
Renata Micha et al. JAMA.2017;317(9):912-924.doi:10.1001/jama.2017.0947

要点:米国国民における食物と特定の心血管代謝性疾患との関連性は十分に確立されていない。

目的:米国の成人での特定した10種類の食物と心疾患、脳卒中、2型糖尿病による死亡との関連性を評価する。

試験デザイン、設定、試験参加者:comparative risk assessment modelを用いて米国国民健康栄養調査:National Health and Nutrition Examination Surveys(NHANES)[1999年-2002年: n = 8104; 2009年-2012年: n=8516]から別々に抽出したデータと米国国民の人口統計と食習慣に関する不確実性とを融合した。そして潜在的なバイアスを評価するためにデータの妥当性が分析された前向きコホート研究やランダム化臨床試験のメタ解析によって10種類の食物と心疾患、脳卒中、2型糖尿病による死亡との関連性を評価した。また全米保健医療統計センター:National Center for Health Statistics(NCHS)のデータから米国国民の疾患別死亡率を調査した。

暴露:心血管代謝性疾患に関連する10種類の食物/栄養素の消費量:果物、野菜、ナッツ/種実類、全粒穀物、非加工の赤肉、加工肉、砂糖入り飲料、多価不飽和脂肪、魚介類由来のオメガ3脂肪酸、ナトリウム

主要評価項目、転帰:2012年における心血管、脳卒中、2型糖尿病による全死亡数と死亡率を概算した。また2002年から2012年の期間における疾患別、人口統計学上の特性別(性、人種、学歴)の死亡率とその傾向も評価した。

結果:2012年に米国の成人において総計702308人の心血管代謝性疾患死が発生し、そのうち506100人が心血管疾患(冠動脈疾患:371266人、高血圧性心疾患:35019人、その他の心血管疾患:99815人)による死亡であり、128294人が脳卒中(虚血性:16125人、出血性:32591人、その他:79578人)による死亡であった。また、2012年の心血管代謝性疾患死のうち推計318656人の死亡(95%UI: 306064-329755; 45.4%)が10種類の食物の準適量摂取と関連していた。男女の割合は48.6%(95%UI: 46.2%-50.9%)が男性で41.8%(95%UI: 39.3%-44.2%)が女性であった。年齢別でみると64.2%(95%UI: 60.6%-67.9%)が若年者(25-34歳)で35.7%(95%UI: 33.1%-38.1%)が高齢者(75歳以上)であった。人種別では53.1%(95%UI: 51.6%-54.8%)が黒人で50.0%(95%UI: 48.2%-51.8%)がヒスパニック、42.8%(95%UI: 40.9%-44.5%)が白人であった。学歴でみると、46.8%(95%UI: 44.9%-48.7%)が低学歴で45.7%(95%UI: 44.2%-47.4%)が中程度、39.1%(95%UI: 37.2%-41.2%)が高学歴であった。2012年において食物が関連する心血管代謝性疾患死で最も多かったのがナトリウムの高摂取(66508人; 心血管代謝性疾患死の9.5%)で、次いでナッツ/種実類の低摂取(59374人; 8.5%)、加工肉の高摂取(57766人; 8.2%)、魚介類由来のオメガ3脂肪酸の低摂取(54626人; 7.8%)、野菜の低摂取(53410人; 7.6%)、果物の低摂取(52547人; 7.5%)、砂糖入り飲料の高摂取(51694人; 7.4%)であった。2002年から2012年の間に人口を補正した後の米国の年間の心血管代謝性疾患死は26.5%減少した。最も減少したのは多価不飽和脂肪の摂取量に関連する死亡(-20.8%[95%UI: -18.5%--22.8%])で、次いでナッツ/種実類(-18.0%[95%UI: -14.6%--21.0%])、そして砂糖入り飲料(-14.5%[95%UI: -12.0--16.9%])であった。逆に最も大きな死亡の増加と関連したのは未加工の赤肉の摂取量に関連する死亡(+14.4%[95%UI: 9.1%-19.5%])であった。

結論、関連性:特定の食物は心疾患、脳卒中、2型糖尿病による死亡の大部分と関連していた。この研究結果は優先すべき食物を見極める手助けとなり、公衆衛生の計画立案を導き出し、食習慣を改め健康を増進させるための治療戦略をもたらすだろう。

読後感想:今までは個別の栄養素ごとに病気と死亡率との関係は出てきていたが、今回は10の栄養素についてまとめて調べられており、より重要視される栄養素がなにか分かるようになった。要点としては青魚やナッツを多く食べて、砂糖入りのジュースと未加工赤身肉を減らせば心血管疾患や代謝疾患による死亡リスクを下げることになる。またこの研究は、食事内容の偏りが多くの心臓代謝疾患の死亡リスクに関わっている点が面白く、今後は食事指導などでリスクの高い人は参考になる研究結果だと思う。(薬剤師 松岡武徳)

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