日本ローカーボ食研究会

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105.心不全および鉄欠乏を呈した患者における鉄カルボキシマルトース

Ferric Carboxymaltose in Patients with Heart Failure and Iron Deficiency

N Engl J Med 2009;361:2436-48.

【背景】
 鉄分欠乏は好気的なパフォーマンスを損なう可能性がある.この研究は,鉄の静脈内投与(ferric carboxymaltose)による治療が,貧血の有無にかかわらず,心不全,左心室駆出率の低下および鉄欠乏を有する患者の症状を改善するかどうかを調べることを目的とした.


【方法】
 我々はニューヨーク心臓協会(NYHA)機能クラスIIまたはIIIの慢性心不全を有する459人の患者,左心室駆出率が40%以下(NYHAクラスIIの患者の場合)または45%以下(NYHAクラスIIIの場合),鉄欠乏(トランスフェリン飽和が20%未満であった場合,フェリチンレベルは1リットルあたり100μg未満,または1リットルあたり100?299μg)および95?135 g/Lのヘモグロビンレベルを登録した.患者は2:1の比率で無作為に200mgの静脈内鉄(フェリックカルボキシマルトース)または生理食塩水(プラセボ)を投与された.主なエンドポイントは24週目の両方で自己報告された患者グローバルアセスメントおよびNYHA機能クラスであった.副次的なエンドポイントには、6分間の歩行距離と健康関連のQOLが含まれていた.


【結果】
 カルボキシマルターゼ第二鉄を投与された患者の50%は,患者全体評価によるとプラセボを受けた患者の28%と比較して多かれ少なかれ改善されたと報告した(改善のためのオッズ比2.51; 95%信頼区間[CI]1.75?3.61).カルボキシマルターゼ第二鉄に割り当てられた患者のうち47%は,第24週にNYHAの機能クラスIまたはIIを有し,プラセボに割り付けられた患者の30%と比較した(1クラスの改善のためのオッズ比2.40; 95%CI 1.55?3.71).結果は貧血患者および貧血以外の患者で似ていた.6分間の歩行試験の距離および生活の質評価ではフェリックカルボキシマルトースで有意な改善が見られた.死亡率,有害事象および重篤な有害事象の発生率は2つの試験群で同様であった.

Ferric_Carboxymaltose1.jpg


【結論】
 慢性心不全および鉄欠乏症の患者における貧血の有無にかかわらず,静脈内のカルボキシマルトースを用いた治療は,症状,機能的能力および生活の質を改善する.副作用プロファイルは許容可能である.

【感想】
 高齢化に伴って日本では心不全は増え続けており,入退院を繰り返す心不全の患者さんにも度々遭遇する.心不全には特効薬があるわけではないため,数種類以上の薬を組み合わせて進行を予防するための治療を行うが,残念ながら薬を増やしていっても徐々に重症化し,致命的な経過をたどることが多い.この論文では,心不全患者さんを対象に,貧血の有無にかかわらず鉄の点滴治療によって心機能が改善するのではないか?としたものである.この論文以後,同様の介入研究が行われ,歩行機能の改善や,生活の質の改善,入院の減少などに効果があることが分かってきているが,死亡率までは改善させることはできていない(European Heart Journal 2015, 36, 657?668).しかも,内服の鉄剤では効果が確認できず(JAMA. 2017;317(19):1958-1966),どうやら注射の薬しか効果がないようだ.これは心不全患者さんで腸管からの鉄吸収が低下しているのではないか?という考察がされている.まだまだ,不明な点も多い心不全の注射の鉄剤の効果だが,貧血のない患者さんにも効くというところが重要であり,心筋に対して鉄が直接効果をもたらしているものと考えられる.入退院を繰り返すような進行性の心不全の患者さんのQoL維持や入退院の予防のために,当院でも外来での定期的な鉄剤の点滴治療を行ってもいかもしれない.

(文責:灰本耕基)

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