209.体重およびエネルギー摂取量に対する朝食の影響:ランダム化比較研究のシステマティックレビューおよびメタ解析
Effect of breakfast on weight and energy intake: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
Katherine Sievert et al. BMJ 2019;364:l42 | doi: 10.1136/bmj.l42
和訳
【目的】
高所得国の住民で朝食の摂取が体重変化およびエネルギー摂取量に及ぼす影響を調査する。
【試験デザイン】
システマティックレビューおよびメタ解析
【データ源】
1990年1月から2018年1月の期間に発表された体重およびエネルギー摂取量に対する朝食の影響を調査したランダム化比較研究をPubMed、Ovid Medline、CINAHLから検索した。2018年10月にClinicalTrials.govおよびWorld Health Organization’s International Clinical Trials Registry Platformを検索し、登録されてはいるが未発表の試験や現在進行中の試験のすべてを確認した。
【選択研究の適格基準】
高所得国の成人での朝食の摂取の有無を比較したランダム化比較研究には体重あるいはエネルギー摂取量のデータが含まれた。二人のレビュアーがそれぞれ別々にデータを抽出し、含まれる研究のバイアスリスクを評価した。朝食摂取が体重および一日のエネルギー摂取量に及ぼす影響についてランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。
【結果】
13の研究のうち7つの研究で朝食摂取が体重変化に及ぼす影響を調査しており、10の研究でエネルギー摂取量に対する影響を調査していた。メタ解析の結果、習慣的に朝食を摂る群と摂らない群で分けて調査した研究では、朝食を摂らない群での体重の差異はわずか(平均差:0.44kg、95%CI:0.07-0.82)であったが、多少の非一貫性が認められた。(I2=43%)相当な非一貫性(I2=80%)にも関わらず、朝食摂取群に割り付けられた参加者では、朝食非摂取群の参加者より一日の総エネルギー摂取量が多かった。(平均差:259.79kcal/day、78.87-440.71;1kcal=4.18kj)メタ解析に含まれたすべての研究が、参加者の居住地域が限られており、追跡期間が短期間(体重変化に関する研究では7週間、エネルギー摂取量に関する研究では2週間)の試験のみであったため、バイアスリスクが高いか不明であった。また試験の質が概して低いため、メタ解析の結果は注意して解釈する必要がある。
【結論】
朝食を摂る習慣が確立されているにも関わらず、減量の目的で朝食を摂るようにすることは良い方法ではない可能性があることをこの研究は示唆している。逆効果を示す可能性があるため、成人において減量のために朝食摂取を推奨する際は注意が必要である。体重管理の手段において、朝食摂取の役割を調査するために更に多くの質の高いランダム化比較研究が必要とされる。
【読後感想】
減量するための戦略としての朝食摂取についてはこれまで賛否が分かれていたが、最近は国内外において多くの研究結果が発表され、現在では減量目的での朝食抜きは推奨されていない。逆に言うと、朝食を抜くと太るというのである。2010年から2018年の海外の朝食に対する推奨事項を見てみると、朝食抜きが推奨されない理由として多く挙げられているのが、朝食を抜くことによって空腹感が生じ、高カロリー・高脂肪の間食が増えてしまうという推論である。また、根拠とする研究が限られた地域での観察研究や人間ではなくラットを対象にした研究のためエビデンスレベルとしては低いと言わざるを得ない。このメタ解析においても、筆者自らバイアスリスクや試験の質の低さに言及しており、朝食と体重変化については結論が出たとは言い難い。減量だけを目的とするならば、他の方法を模索した方が良さそうだ。
(薬剤師 北澤雄一)