42.レニン-アンギオテンシン系阻害薬の使用が絶対適応とされている糖尿病
レニン-アンギオテンシン系阻害薬の使用が絶対適応とされている糖尿病:システマティックレビューと無作為化試験のメタ分析
Diabetes mellitus as a compelling indication for use of renin angiotensin system blockers: systematic review and meta-analysis of randomized trials.
Bangalore S. BMJ. 2016 Feb 11;352:i438.
目的:糖尿病を持つ患者でレニンアンギオテンシン系阻害剤を使用した結果を他の降圧剤と比べて評価すること。
デザイン:メタ分析。
データの源泉と研究の選択:PubMed, Embase, Cochrane centralの糖尿病を持つ患者でRAS阻害薬対他の降圧薬の無作為化試験の対照試験の記録。評価項目は全死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血管再建術と末期腎疾患とした。
結果:探索の結果、19の無作為化比較試験で25414人の、全体として95910人年追跡した糖尿病の患者を発掘した。他の降圧剤と比較したとき、RAS阻害剤は全死亡(相対危険度0.99、95%CI 0.93-1.05)、心血管死(1.02、0.83-1.24)、心筋梗塞(0.87、0.64-1.18)、狭心症(0.80、0.58-1.11)、脳卒中(1.04、0.92-1.17)、心不全(0.90、0.76-1.07)、そして血管再建術(0.97、0.79-1.22)のいずれのリスクについても同様だった。末期腎疾患の具体的な腎の転帰でもまた、それらに有意差はなかった(0.99、0.78-1.28)(末期腎疾患の23%の減少を示す能力が94%)。
結論:糖尿病を持つ人々で、RAS阻害薬はサイアザイド系、カルシウム受容体阻害剤、β阻害剤のような他の降圧剤に比して、具体的な心血管と腎のエンドポイントのリスクを減らすことについて優れていない。これらの知見は、『腎疾患のない糖尿病の患者の高血圧の治療には他の降圧剤もまた使うべき』との、欧州心臓病学会(ESC)/欧州高血圧学会(ESH)のガイドラインと、予防、発見、評価、治療の米国合同委員会の第8次ガイドラインの推奨事項を支持している。
読後感想
今までに糖尿病高血圧にはRAS阻害薬がよく出ると、いろいろな病院の処方箋を見ていて感じていたが今回の論文でRAS阻害薬が特別優位ということはないことが分かった。
しかし、このような論文がRAS阻害薬の特許が切れた後や、もうすぐ特許が切れるこのタイミングで出てくるのは何か今までに意図的なものが感じられる。(薬剤師 松岡武徳)