46.230万人の青年期のBMIと成人期の心血管死
『230万人の青年期のBMIと成人期の心血管死』
Body-Mass Index in 2.3 Million Adolescents and Cardiovascular Death in Adulthood
Gilad Twig,M.D.,Ph.D.,et al. N Engl J Med, April 2016, 374:2430-40
背景:幼少期の肥満の世界的な増加に照らし合わせて青年期のBMIと成人期の心血管死との関連を調査した。
方法:アメリカ疾病予防管理センターから得た230万人のイスラエルの青年(平均年齢17.3±0.4歳)の1967年から2010年までの間に測定されたBMIに関するデータを年齢、性別によって百分位に分類した。主要評価項目は2011年中頃までの心血管疾患、脳卒中、原因不明の突然死、もしくはそれら全ての組み合わせによる死亡数であった。またハザード比の算出にはコックス比例ハザードモデルが用いられた。
結果:追跡期間の42297007人年の間に32127件の死亡が認められ、そのうち2918件(9.1%)が心血管死であり、その中には1497件の冠動脈疾患、528件の脳卒中、893件の突然死が含まれた。多変量解析によると、心血管死と総死亡の危険度はBMIの百分位が50から74(BMI 22.4[男性]、22.1[女性])という正常範囲内の群から段階的な増加が認められた。性別、年齢、生年月日、社会人口統計学的特徴、そして身長で補正するとBMIの百分位が5から24(BMI 18.9[男性]、18.4[女性])の群と比較すると肥満群(≧95分位 BMI 30.8[男性]、32.0[女性])のハザード比は冠動脈疾患死で4.9(95%CI;3.9-6.1)、脳卒中で2.6(95%C;1.7-4.1)、突然死で2.1(95%CI;1.5-2.9)、そして全ての心血管死で3.5(95%CI;2.9-4.1)であった。また同じ百分位の群の心血管死のハザード比は、それぞれ追跡期間が0から10年の間で2.0(95%CI;3.1-5.4)、30から40年の間で4.1(95%CI;3.1-5.4)であり、冠動脈疾患死のハザード比は一貫して高かった。この結果は感度解析においても存続した。
結論:40年間の追跡期間において百分位が正常範囲内の50から74のBMIは心血管死と総死亡との関連が認められた。青年期の過体重や肥満は成人期における心血管死と強く関連していた。
読後感想:BMIと死亡率に関する論文はこれまでいくつか読んできたが、今回のような青年期のBMIと成人期の心血管死を比べた研究は例を見ない。青年期に正常範囲内とされるBMI 22前後であっても成人期の心血管死、総死亡が増加するという結果は驚きである。この結果から、例えばBMIは青年期では18、中年期では24~25、老年期では20~30というように年代別死亡危険度という考え方を導入する必要がありそうだ。 (薬剤師 北澤雄一)