日本ローカーボ食研究会

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7.抗コリン作用薬と認知症の関係

抗コリン作用薬で認知症リスクが増加!
強力な抗コリン作動薬の累積的使用と認知症:前向きコホート研究
Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia:A Prospective Cohort Study
Shelly L. G. et al. JAMA Intern Med (2015), 175: 401-407

重要性:多くの薬は抗コリン作用を示す。一般に抗コリン作用により引き起こされる認知症は、抗コリン治療を止めれば可逆性的に回復すると考えられてきた。しかし一部の研究は抗コリン薬が認知症リスクの増大に関わっているかもしれないことを示唆している。

目的:抗コリン薬の累積的使用が認知症の高い発症リスクに関係しているかどうかを検討する。

研究のデザイン:設定および参加者、人口ベースの前向きコホート研究で、データはワシントン州シアトルの統合医療機構が供給するthe Adult Changes in Thought Study in Group Health から得た。対象は研究開始時点で65歳以上の認知症を発症していない3,434名であった。初期の募集は1994~1996年と2000~2003年に行った。2004年以降は参加者の死亡に伴う入れ替えを継続的に行った。全ての参加者に対して2年ごとの追跡調査をした。分析には2012年9月30日までのデータを含む。

服用量:抗コリン薬の累積服用量を確定するためにコンピューター化した薬局調剤データを使った。服用量は過去10年間に調剤された1日当たりの標準的な使用量(total standardized daily doses: TSDDs)で定義する。直近12ヶ月の服用データは、前駆症状との関連を避けるために除いた。参加者を順に追跡調査したので累積服用量は時間と共に更新した。

主な評価項目と評価尺度:認知症やアルツハイマー病発症の診断は標準診断基準を使った。統計分析はコックス比例ハザード回帰モデルを使い、人口動態特性、保険行動、併存疾患を含む健康状態などによる補正をした。

結果:もっともよく使われる抗コリン作用薬は三環系抗うつ薬、第一世代の抗ヒスタミン薬、膀胱に作用する抗ムスカリン薬である。平均追跡期間7.3年の間に797例(23.2%)で認知症を発症した(それらのうち637例[79.9%]がアルツハイマー病だった)。認知症とアルツハイマー病で、10年間の累積服用量と発症と間に関係が見られた(傾向検定、P<0.001)。認知症については抗コリン薬の累積的な服用による発症の補正ハザード比はTSDD 1~90で0.92(95%CI:0.74~1.16)、TSDD 91~365で1.19(95%CI:0.94~1.62)、TSDD 360~1095で1.23(95%CI:0.94~1.62)、TSDD 1095以上で1.54(95%CI:1.21~1.96)であった。同様の傾向がアルツハイマー病でも認められた。これら解析結果は、二次解析、感度解析、事後解析でも変わりなかった。

結論と関連事項:抗コリン薬の累積服用量が高くなることと認知症リスクの増加とは関係している。医療専門家と高齢者との間でこの潜在的な薬物使用リスクについての認識を高める努力をすることは抗コリン薬の使用量を徐々に最小限にするために重要である。

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