日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

ローカーボ食(ゆるやかな糖質制限食)のレシピ集を発刊

レシピ集発刊にあたり

NPOローカーボ食研究会理事長 灰本クリニック 灰本 元
灰本クリニック 管理栄養士 渡邊志帆

 2018年7月、わたしたちのローカーボ食(ゆるやかな糖質制限食、本書では糖質オフ)のノウハウを満載したレシピ集が発刊の運びとなりました。ローカーボ食には次の4つの効果があります。①血糖値を下げる、②体重が減る、③血液の中性脂肪値が下がり、HDL-コレステロール値(善玉)が上がる、④LDL-コレステロール値が下がる(変化がないという報告もありますが、灰本クリニックの指導方法では下がります)、⑤食欲が減る。
 本書は生活習慣病予備群や一般の方々が少しでも健康に生きるために書きました。少し糖質制限量を調整すると糖尿病治療にも十分応用できます。ちまたにあまたある類書はとても科学的とは言えず、いくつもの基本的な間違いがありました。わたしたちがこの十数年間にローカーボ食の臨床研究を積み重ねて到達した安全で効果的なローカーボ食の方法があちこちにちりばめられており、画期的なレシピ集になったと自負しています。
 その一つ目は、糖質制限食は欧米ではhigh-fat diet (高脂肪食)と呼ばれているように糖質を制限すると同時に減ったカロリー分は脂質摂取を増やすことによって補う食事療法です。ところが、当院の患者の治療前後の食事日記を比較すると、男女とも糖質摂取量は著しく低下しているにもかかわらず脂質摂取量は男で一日わずか8g、女で10gしか増えていません。毎月栄養指導で脂質を増やすように指導してもこの状態です。これではお腹がすいて短期間で脱落してしまいます。本書では、脂質を上手に摂るためにレシピ一つ一つに“糖質オフのポイント”と同時に“脂質オンのポイント”を記載するという画期的な工夫をしました
 二つ目は、日本人の一日の糖質摂取量は個人個人で大きく異なることです。当院の調査で150g~630g(平均は260g前後)まで幅広く分布しています。これをたとえば一律170gにせよというのは非科学的です。400gも食べている人は100g~150g制限できますが、200gしか食べていない人は制限する必要はないからです。本書では、まず自分の食事日記をつけてもらい、およそ毎日自分がどのくらい糖質を食べているか計算し、そこからその人に応じて糖質制限量を決めるという科学的な方法を採用しています。
 三つ目は、糖質を制限し過ぎると癌死や心筋梗塞死が増えることは世界的に周知の事実です。日本人でどのくらいなら死亡リスクが上がらないかについて日本人の大規模な疫学研究を基に計算すると、糖尿病患者を除いて200g以下に制限すべきではありません。それを明記しました。なお、糖尿病患者さんでは一日170gまでを限界としています。糖尿病患者さんの死因の第1位は癌死ですので、それより制限すると癌死のリスクが高まります。
 四つ目は、大規模な研究から日本人がもっとも長生きなBMIは男で23.0~29.9、女は21.0~26.9で、男でBMIが23.0未満、女で21.0未満ではやせればやせるほど死亡リスクが上がることがわかってきました。したがって、生活習慣病予備群や一般の方では男でBMIが23.0未満、女で21.0未満の方々はローカーボ食をすべきではありません。糖尿病患者さんも体重の減りすぎには十分注意してください。
 その他、アルコール、果物、ソフトドリンク、人工甘味料などについても最近の世界の科学的成果をふんだんに織り込んで、それらの是非を解説しました。
この本にはローカーボ食の特徴や利点だけでなく弱点や課題もしっかり解説してあります。生活習慣病予備群や一般の方々、それに糖尿病患者さんもそれらをしっかり理解していただいて、この食事療法を日常生活に上手に組み込んでいただければ本望です。


2018年 吉日
NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事
灰本 元

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