日本ローカーボ食研究会

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腸内細菌と病気 その1「腸内細菌を壊す身近な食品と薬」

灰本クリニック 灰本 元

 腸内細菌とは主に小腸~大腸に生息する細菌のことです。口腔内には唾液1mlあたり1億個の細菌が生息していますが、胃ではPH1という強力な酸性のなかで著しく生息数は少なくなり、小腸から大腸に下りるにつれて増加し、大腸では1兆個/便1gに達するといいます。

人体には100兆個を超える腸内細菌が生息しており、これは人体を構成する全細胞数40兆個よりもはるかに多いのです。わたしの感覚では、まるで地球から見た銀河系全体に匹敵します。
 わたしが学生だった頃は腸内細菌の研究は暗黒の時代であって、便をシャーレの上で培養するという方法しかなく、それも酸素のある環境では生きることができない嫌気性菌が中心だったので1000種類といわれる膨大な種類の腸内細菌を研究することは無理でした。したがって、医学部で腸内細菌についての詳しい講義を聴いた記憶はありません。長らく医学会のブラックボックスだったのです。
 1990年~2000年にかけて、培養するのではなく便中の細菌の遺伝子RNAを分析して腸内細菌の種類と数を知るという分子生物学的な方法が確立されました。そして、2010年前後から腸内細菌と病気に関するおびただしい数の研究が世界各国から発表されています。
 わたしは早期癌の発見のために胃・大腸カメラやCTを使っていつも胃腸をみていますし、“ゆるやかな糖質制限食”による糖尿病治療や食事療法による病気の治療を専門としているので、以前から腸内細菌には注目していました。数年前に一つの研究が目にとまりました。2015年にデンマークの研究者が150万人の一般住民を追跡して、それぞれの住民の抗生剤服用回数を0回から25回以上まで6段階に仕分け、15年間の糖尿病発症数を調べたところ、抗生剤をほとんど飲まなかった群に比べてもっともたくさんの回数飲んだ群では糖尿病は2倍も多く発症していることがわかりました。この結果から、糖尿病の発症には抗生剤によって腸内細菌が破壊、かく乱されることが大きく関与しているというのです。
 不思議だったのは、このような抗生剤服用回数と糖尿病発症という一見なんの脈絡もない関係をどうして調べる気になったかということです。研究というのはそこに研究者という生身の人間が存在して、「―――という疑問を解決したい」という願望があって初めて研究開始になります。その疑問を誰も持たないなら永久に抗生剤服用回数と糖尿病発症の関係を人類が知ることはなかったでしょう。火のないところに火事は起こりません。デンマークの研究者は論文の初めに「抗生剤が肥満と糖尿病も発症するという研究はすでに欧米で発表されており、わたしたちはもっと多い人数(国民の1/4)で調査してみた。」と動機が記載されていました。
 それにしても糖尿病の発症に腸内細菌が関わっている、という結果は驚きでした。腸内細菌を破壊・かく乱する物質はわたしたちの身の回りに数多くあります。抗生剤、強い制酸剤(胃薬、プロトンポンプ阻害薬)それに人工甘味料です。これらは腸内細菌の破壊やかく乱を起こします。腸内細菌が乱れると、肥満とやせ、神経難病、自閉症、糖尿病、アレルギーと喘息、非アルコール性脂肪肝炎(脂肪肝の重症型)、炎症性腸疾患、老化など様々な病気の発症の原因となることがわかってきています。
 次回も腸内細菌が関係する病気のうち人工甘味料、抗生剤による糖尿病と肥満・やせの研究を紹介します。

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