215.インターロイキン阻害薬を使用中のリウマチ性疾患患者における感染症および癌リスク システマティックレビューおよびメタアナリシス
Risk of Infection and Cancer in Patients With Rheumatologic Diseases Receiving Interleukin Inhibitors
A Systematic Review and Meta-analysis
Jawad Bilal et al. JAMA Network Open. 2019; 2(10):e1913102. doi:10.1001/jamanetworkopen.2019.13102
【重要点】
インターロイキン阻害薬の安全性は十分に確立していない。
【目的】
インターロイキン阻害薬を用いて治療するリウマチ性疾患患者における重症感染症および日和見感染症リスク、癌リスクを評価する。
【データ源】
Ovid MEDLINE、Epub Ahead of Print、In-Process & Other Non-Indexed Citations; Ovid MEDLINE Daily; Ovid Embase; Ovid Cochrane Central Register of Controlled Trials; Ovid Cochrane Database of Systematic Reviews、Scopusといったデータベースより各研究の開始から12月30日までを検索した。
【試験選択】
ランダム化プラセボ比較対照試験でリウマチ性疾患患者においてインターロイキン阻害薬による治療を評価したもの、またその安全性に関するデータを報告したものを解析に含めた。
【データ抽出・解析】
このシステマティックレビューはPRISMA声明に準じて報告された。二人の研究者が独立して試験データを抽出し、エビデンスに存在するバイアスのリスクおよび確実性を評価した。固定効果モデルを用いたメタアナリシスを行い、インターロイキン阻害薬とプラセボを比較して重症感染症および日和見感染症の発症、癌の発症に対するオッズ比を集計した。
【主要評価項目・方法】
注目したアウトカムは、プラセボ服用患者と比較したインターロイキン阻害薬服用患者における重症感染症、日和見感染症、癌の発症数であった。
【結果】
このメタアナリシスには患者29214人(重症感染症:24236人、日和見感染症:9998人、癌:21065人[それぞれのアウトカムで重複])が含まれた。インターロイキン阻害薬を使用する患者ではそれぞれのアウトカムに対するリスク高く、以下の通りであった。
重症感染症 OR, 1.97; 95%CI, 1.58-2.44; P<0.001, I2=0%; high certainty
日和見感染症 OR, 2.35; 95%CI, 95%CI, 1.09-5.05; P=0.03, I2=0%; moderate certainty
癌 OR, 1.52; 95%CI, 1.05-2.19; P=0.03, I2=11%; moderate certainty
【結論・関連性】
重症感染症および日和見感染症リスク、癌リスクはプラセボと比較してインターロイキン阻害薬を用いて治療するリウマチ性疾患患者で増加が見られる。
【読後感想】
インターロイキン(IL)は免疫反応を調節するサイトカインの一群であり、リウマチ性疾患の治療に用いられているが、これまでその免疫抑制作用に伴う感染症や発癌のリスクについては十分なデータが示されていなかった。それぞれのランダム化比較試験(RCT)ではサンプルサイズが小さいこともあり、RCTによっては真逆の結果を示すものも存在する。Arizona大学のJawad Bilal氏らが行ったこのメタアナリシスにより、IL阻害薬の感染症リスク、癌リスクに対する有害性の全体的なデータが示された。今回は個々のRCTの結果のみで判断することの危うさおよびメタアナリシスの重要性を再認識する機会となった。
(薬剤師 北澤雄一)