閉経後女性における人口甘味飲料、砂糖飲料、水と糖尿病発症
閉経後女性における人口甘味飲料、砂糖飲料、水と糖尿病発症:前向きWomen’s Health Initiative観察研究
Artificially sweetened beverages, sugar-sweetened beverages, plain water, and incident diabetes mellitus in postmenopausal women: the prospective Women’s Health Initiative observational study
Huang H. et al, Am J Clin Nutr August 2017 vol. 106 no. 2 614-622
背景:砂糖飲料は糖尿病発症に関係しているが、人工甘味料との関係は明らかではない。
目的:砂糖甘味料と人工甘味飲料の消費量と2型糖尿病の発症リスクの関係、それに砂糖飲料を人工甘味飲料や水で置き換える利点を評価する。
デザイン:Women’s Health Initiativeは1993年から1998年までに閉経後女性の大規模な前向き研究を立ち上げた。砂糖飲料、人工甘味飲料とm図図の消費量は生活習慣問診票によって計算し、2型糖尿病発症は自己申告とした。
結果:64850人の女性から4675人の糖尿病が平均8.4年間の追跡で発症した。砂糖飲料も人工甘味INR予も両方とも糖尿病発症リスクの上昇と関係し、人工甘味料の2 回/日以上(一回は355ml)の摂取が摂取しないか月3回未満の摂取に比べて1.21のハザード比(1.08-1.36)であり、砂糖飲料の2回/日の摂取は週1回未満の摂取に比べて1.43のハザード比(1.17-1.75)であった。
サブグループ解析では人口甘味飲料に関係した糖尿病発症は肥満患者だけにみられた。
砂糖飲料を同じ量の人工甘味飲料に置き換える解析モデルは糖尿病発症を減らさなかった。しかし、1回の人口甘味飲料を水に統計的に置き換えると、糖尿病発症リスクは5%減少し、1回の砂糖飲料を水に置き換えると10%減少した。
結論:人口甘味飲料は21%の糖尿病発症リスクを上昇させ、そのリスクは砂糖飲料の半分であった。砂糖飲料と人口甘味飲料を水に置き換えるとそのリスクを減らすことができる。しかし、残された交絡因子と因果関係の逆転がこの結果を説明できる可能性もあるので、この結果を解釈するには注意が必要である。
読後感想:糖質制限食を実施するときに人工甘味飲料や人工甘味料を使ってよいという立場と使うべきではないという立場に二つが対立している。それは、かつて日本で長らく使われていた人工甘味料のサッカリンが発ガン性ゆえに突然販売停止になった苦い経験を彷彿とさせる。その経験がある私の世代は、人工甘味料に懐疑的かもしれない。私ははっきりと反対である。口当たりはたいそう甘いが健康は大丈夫、そんなヒトの味覚をだますような物質が安全とは到底私には思えないからである。Nature2014に人工甘味料が腸内細菌の撹乱を介して耐糖能を悪化させるという論文が発表された。この研究はこれでもかというほど詳細な実験を動物だけでなく人体をも題材にして証明してくれた。
一方、大規模観察研究でも2011年以後人工甘味飲料の糖尿病発症について3編の報告がこの専門誌(AJCM)に掲載されている。肥満がある場合に2型DM発症リスクが増えるという結果と肥満にかかわらず発症を増加させるという結果となっている。また、この研究では統計的に砂糖飲料を人工甘味飲料に置き換えても糖尿病発症リスクは減らないと結論付けている。一方、食事療法を指導する立場からみると、人口甘味飲料は患者がいくら飲んでも血糖が上がらないと信じているので量のコントロールが困難となっている。砂糖飲料は健康によくないと患者は知っているので量のコントロールを指導しやすい。
さらに重要な問題は人工甘味料が腸内細菌を撹乱する点である。その撹乱は耐糖能異常や糖尿病発症という結果だけでは済まない可能性が高い。肥満、動脈硬化、アレルギー、自閉症、多発性硬化症、肝疾患など腸内細菌の撹乱は多方面の疾患を発症することがわかりつつある。サッカリンの失敗を繰り返さないために人工甘味飲料および人工甘味料の食品を自粛すべきである。(医師 灰本 元)