日本ローカーボ食研究会

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117.原発性不眠症における睡眠ポリグラフ検査に対するプラセボ効果:メタ解析

Effect of Placebo Conditions on Polysomnographic Parameters in Primary Insomnia: A Meta-Analysis
Alexander Winkler et al. SLEEP 2015;38(6):925?931. https://doi.org/10.5665/sleep.4742

【研究目的】
 原発性不眠症に対する薬物療法におけるプラセボ効果、特にその結果を客観的に評価したプラセボ服用による効果の役割についてはほとんど知られていない。我々は、原発性不眠症を扱った睡眠ポリグラフ検査を含むランダム化比較試験におけるプラセボ効果の効果量解析を行うことを目的とした。

【デザイン】
 PubMed、PsyclNFO、PSYNDEX、PQDT、OPEN、OpenGREY、ISI Web of Knowledge、Cochrane Clinical Trials、World Health Organization International Clinical Trials Registry Platformを用いて包括的な文献検索を行った。メタ解析はランダム効果モデルを用いて行い、また合計3969人の参加者を含む82の治療状況を報告した32の研究に基づいて行った。特に重要視したのは客観的、主観的結果およびプラセボ効果と実薬の効果の比較であった。

【方法・結果】
 効果量の推定値(Hedges g:ヘッジズの効果量)は低度から中等度ではあるが有意かつ頑健なプラセボ効果が存在することを示唆しており、そのプラセボ効果は入眠までの時間(-0.35)、全体の睡眠時間(0.42)、入眠後の覚醒(-0.29)、睡眠効率(0.31)、主観的な入眠までの時間(-0.29)、主観的な全体の睡眠時間(0.43)、主観的な入眠後の覚醒(-0.32)、主観的な睡眠効率(0.25)、睡眠の質(0.31)の点において不眠症の症状を軽減した。このようにプラセボ効果は客観的、生理学的要因においても明らかであった。この研究によって実薬群の63.56%という結果がプラセボ群においても達成されたことが示された。

【結論】
 これらの有力なプラセボ効果を考慮して、今後の研究によって臨床診療におけるプラセボ効果の活用方法が調査されるべきである。

【読後感想】
 原発性不眠症の場合、その薬物治療の中心となるのがベンゾジアゼピン系薬剤やZ薬と呼ばれる非ベンゾジアゼピン系薬剤であるが、両者ともに問題とされるのが依存性である。本来はその使用を短期間に留めるべき薬剤であるが、日本では漫然と処方され続けているため依存が形成されてしまい、減薬や離脱が大変難しい状況に陥ってしまっており、日々の服薬指導においてもこの現状を痛感する。しかし、実際は患者自身でさえその効果が明確でなく、何となく服用している場合も多い。この研究結果が示す通り、睡眠に対するプラセボ効果の臨床的意義は大きく、今後依存や筋弛緩作用などの有害性を有する睡眠薬の減薬、離脱に対して非常に有用な役割を果たすことになるだろう。

(薬剤師 北澤雄一)

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