2.PPIで治療中の外来患者が院外で肺炎に感染・発症するリスク
なにげなく逆流性食道炎で毎日内服しているプロトンポンプ阻害薬を長期に内服すると危険!
「プロトンポンプ阻害剤 [PPI] で治療中の外来患者が院外で肺炎に感染・発症するリスク:組織的調査とメタ解析」
「Risk of Community-Acquired Pneumonia with Outpatient Proton-Pump Inhibitor Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis (Lambert, A.L. et al. PLoS ONE (2015) 10: e0128004.)」
背景:プロトンポンプ阻害剤(PPI)は頻繁に処方される薬剤の一つである。院外感染性肺炎(以下CAP)は、しばしば病、死亡そして外来治療の主要な原因である。いくつかの研究はPPI服用患者でCAP発症のリスクが増加することを示唆している。そこでPPIの外来治療を受けている成人患者についてCAP発症リスクとの相関を特定するため、システマティック・レビューとメタ解析を行った。
方法:体系的な検索を行ったデータベースは、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Scopus and Web of Science(2014.2.3)である。18歳以上外来でPPIを服用している患者とCAPと診断された患者についての症例対照研究、クロスオーバー、コホート研究、無作為化臨床試験を取り上げた。評価項目の第一はCAPとPPI療法との相関である。第二ではCAPによる入院のリスクを解析、サブ解析で年齢が異なる群についてPPIの服用とCAPとの相関を、異なるPPIの服用量、異なるPPI治療の期間について評価した。
結果:33件のシステマティック・レビューを行ったが、そのうち26件はメタ解析である。これら26件の研究では、対象者6,351,656名のうち226,769名がCAPを発症した。外来PPI療法でCAPを発症する相対危険度は1.49(95%CI:1.16,1.92; l2 99.2%)であった。このリスクは、PPIの服用量あるいは患者の年齢に関わらず治療開始から最初の一か月に増加した(OR:2.10; 95%CI 1.39,3.16)。PPI療法はCAPを発症して入院するリスクも増加させた(OR:1.61; 95%CI:1.12,2.31)。
結論:外来によるPPI服用療法によりCAPの発症リスクは1.5倍に増加、そのうち服用開始後30日以内が最もリスクが高かった。医師および薬剤師はPPIを処方するに際して、特に他の治療法に変更できそうな場合やPPI服用の有益性が不確かな場合には、このリスクに気づくべきである。