日本ローカーボ食研究会

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15.抗菌薬と2型糖尿病の発症危険度

抗生剤を飲むほど2型糖尿病の発症が増える!!
抗菌薬と2型糖尿病の発症危険度:地域住民を対象とした症例対照研究Use of Antibiotics and Risk of Type 2 Diabetes: A Population-Based Case-Control Study Kristian Hallundbæk Mikkelsen, Filip Krag Knop, Morten Frost, Jesper Hallas, and Anton Pottegård J Clin Endocrinol Metab doi: 10.1210/jc.2015-2696

背景:目的:人間の腸管に生息する細菌が人間の栄養代謝に影響を及ぼす可能性があるという根拠は蓄積されつつある。我々は抗菌薬の服用が2型糖尿病の発症危険度に影響を与えるのかどうか、またその影響は抗菌薬の特定の種類によって異なるのかどうかを調査した。

方法:2000年1月1日から2012年12月21日までの期間におけるデンマーク(人口560万人)での2型糖尿病の発症に関する地域住民を対象とした症例対照研究を行った。解析はDanish National Registry of Patients登録患者、Danish National Prescription Registry登録患者、Danish Person Registry登録患者のデータを統合して行った。

結果:抗菌薬の処方数が5以上と0.-1(対照)とで全ての種類の抗菌薬の服用と2型糖尿病の発症のオッズ比は1.53(95%信頼区間1.50-1.55)であった。特定の種類の抗菌薬が2型糖尿病の発症危険度と明確な関連があったわけではないが、抗菌スペクトルが広く(OR 1.31)、静菌性の抗菌薬(OR 1.39)と比較して抗菌スペクトルが狭く(OR 1.55)、殺菌性の抗菌薬(OR 1.48)ではわずかに糖尿病の発症危険度が高かった。明らかな用量反応関係は抗菌薬の服用回数の累積が増加することで確認された。2型糖尿病患者における抗菌薬の使用の増加は2型糖尿病の診断の前後15年間で見られた。

結論:この研究結果は抗菌薬の服用が2型糖尿病の発症危険度を増加させる可能性を裏付けるものとなるだろう。しかし、それと同時に糖尿病と診断される前の人では感染症の危険度の増大に対して抗菌薬の需要が増えることを示しているのかも知れない。

読後感想
 これまでローカーボ研究会ジャーナルクラブではいくつかの薬剤による有害事象に関する論文を掲載してきているが、今回は抗菌薬と糖尿病の発症危険度というおおよそ結びつかない組み合わせに興味を惹かれ読んでみた。結論で著者が述べている通り、2型糖尿病と診断される前に感染症の危険性が増えたことによる抗菌薬の処方回数の増加が原因のひとつと言えるかも知れない。しかしながらこの論文の視点が画期的なものであることには違いがなく、今後あらゆる国や地域における長期的な調査が必要なのではないだろうか(担当 薬剤師 北澤雄一)。

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