日本ローカーボ食研究会

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第8回学術総会の印象記1

印象記

 2018年3月11日、日本ローカーボ食研究会第8回学術総会に参加致しました。その印象をご報告させて頂きます。
今年は「健やかに老いるための高齢者の生活管理」をテーマとして第1部では医師による特別講演、第2部では医師、管理栄養士による症例検討会がパネルディスカッション方式で行われました。
 第1部ではまず春日井市民病院 循環器内科部長 小栗光俊先生に入院中の高齢者心不全の実態、栄養管理についてご講演頂きました。心不全患者では様々な併存疾患が予後に影響するため、栄養介入が特に難しいそうです。その中でも食欲不振を招く厳格な塩分制限に焦点を当てられた内容でした。心不全患者では低ナトリウム血症が起きやすいため、それが予後悪化に影響が大きい。そこで心不全急性期においては減塩ではなく食欲を増進するためにふりかけ等を利用し、体内の水分バランスは利尿剤で調整するというお話でした。管理栄養士としてマニュアル通りの減塩ではなく、減塩する事での食欲低下による予後悪化という観点を持つことが必要だと改めて考えさせられました。
 次に名古屋大学大学院医学系研究科(保健学) 山田純生先生からは慢性心不全におけるフレイルの改善・予防のための栄養・運動管理についてご講演頂きました。フレイルの中心的要素であるサルコペニアにも触れられ、フレイルの出現機序による各々の対策、フレイルが高齢者慢性心不全の長期管理指標として有用性が高く今後の高齢者における臨床指標となり得る可能性もお話しくださいました。治療の基本として第1に病態コントロール、第2に栄養管理、第3に運動が大切だということも同様に学ぶことが出来ました。
 さて、第2部では「マニュアル通りの治療がかえってQOLを下げた症例」をテーマとして医師、管理栄養士が症例を発表しました。
私も医院を代表して「緩やかな糖質制限でQOLが改善した症例」を発表させて頂きました。この患者様は食べることが大好きな方で前医によるカロリー制限指導、将来透析が必要になるという宣告、処方薬に納得がいかずセカンドオピニオンを求めて来院された方でした。既に緩やかな糖質制限が出来ており、非常にバランスの良い食事をされておられました。毎月1回、食事記録を提出していただき、バランスの良い糖質制限食が実践できている事を管理栄養士が確認し、栄養指導の際に御本人・御家族にお伝えする事で、食生活を楽しみながら安定した血糖コントロールを維持できるようになりました。この患者様は糖質制限と相性が良かったと言えるでしょう。その一方でむらもとクリニックからは「ローカーボ食で笑顔が消えた症例」が提示されました。また、渡辺病院と灰本クリニックからは塩分制限がかえって患者さんの状態を悪化させていた症例が提示されました。
これらの症例を通して、高齢化社会においては個々の患者様の生活環境・ライフスタイル・嗜好などを考慮したテイラーメイドの栄養指導が必要であると再認識させられました。
 今回は大変の多くの管理栄養士の方が参加され、後のパネルディスカッションでは意見交換が盛んに行なわれました。このような交流の場があることは自分自身のステップアップにも繋がり、違う見方も出来るようになります。今年で参加して4年目になりますが毎年刺激になり、得るものが大きいと感じています。この会を企画してくださった灰本先生をはじめとする研究会のメンバーの方々に感謝しております。

小早川医院 管理栄養士 江口まどか

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