日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第四回学術集会参加者の印象記

学術集会参加の印象記

渡辺病院 管理栄養士 長坂恵樹子

 平成26年2月2日、名古屋駅前安保ホールにて開催された、第4回学術集会に参加させていただきました。
HPの案内を見ると、講師はローカーボの教科書「正しく知る糖質制限食」の著者である、錚々たる先生のお名前がずらり・・・。緊張もしつつ、当日はどんな雰囲気だろうかとわくわくしていました。当日は遠方からいらした方もみえ、予想以上に参加者が多く、会場はほぼ満席。栄養士会の大御所もおみえになり、ローカーボ食への注目度の高さが感じられました。

 今回の学術集会は、「正しく知る糖質制限食」の出版にあたり、そのねらいや今後の方向性を示すものでした。まずは医療従事者が、科学的な根拠に基づいた正しい知識を持つこと。それが一貫して重視されていたように思います。また、あらゆる職種が連携し組織化することが今後のねらいのようです。ローカーボ食の推進者が協力し様々な角度から問題を解決できれば、もっと多くの方に効果のある食事療法が広められるに違いありません。

 講師の先生方のお話は多岐にわたり、様々な面からローカーボ食について科学的なアプローチがされていました。どれもみな面白く、あっという間に時間が過ぎていきました。ローカーボ食の背景から、治療例の紹介、減量効果のカロリー制限食との比較、コレステロール値の変動、術前の栄養管理への応用、ローカーボ食実践者の食品群別摂取量の比較、アルコール摂取による血糖値の影響等々。難しい内容がスピーディに展開されますが、ユーモアを交えて解説していただき、大変わかりやすい内容でした。

 ローカーボ食を続け、ある一定の値から体重が減らず血糖値も始めのペースほど下がらないという方がみえます。私はなぜなのかわからなかったのですが、講義を聞いている中で、体に備わる恒常性をすっかり見落としていたことに気付きました。その方の体内では、わずかな糖分でも取り込もうと順応し始めたのかもしれません。(実際、断食道場に参加された私の先輩は、『断食で体質が変わった。以前は何を食べても太らなかったのに、今は何を食べても太る』と仰っていました。)そうなると、炭水化物の摂取量が減っているからインスリンの分泌も減り、結果体重が減るという説が通用するのは体が順応する前まで、ということになります。ローカーボ食は順応する前までにガツンとやるか、無理なく気長に少しずつ続けていくことが最善なのでしょうか。今後は個々のインスリンの働き方の変化についても、着目していく必要があるように思いました。

 今回の集会で、多施設の栄養士の方と交流が持てたことも大きな収穫でした。ローカーボ食を指導していると、こんな場合は何と指導するのが最善だろうかと迷うケースも多々あります。腎機能が悪化している場合は?ご高齢でやせの場合は?油脂に強い抵抗がある場合は?etc…。当日会場でお会いした先生方や栄養士の方も、同じような悩みを抱えてみえました。ちなみに私にとって一番難しいのは、「長生きするより好きなものを食べたい」方への指導です。みなさんはどのような指導をされているのでしょうか。ぜひお知恵をお借りしたいところです。

 今回の学術集会を振り返ると、私としては、(私も含めですが)栄養士の方から積極的な質問がもっと出ると、議論がより深まったのでは、と思いました。また、指導にあたって発生する様々な問題を解決するためにも、もっと症例報告があるとよかったのかなと思います。

 今後20年間で、がん患者は1.5倍に増えるという予測がニュースで報道されておりました。最近の食生活をかんがみて1.5倍だということです。糖尿病を改善することだけでなく、その先のがんの発症リスクも抑え、抵抗力を削がないことが目的の緩やかなローカーボ食は、今後さらに必要とされていくのではないでしょうか。

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