日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

参加者の感想

「日本ローカーボ研究会」第一回学術集会に参加して

東亜大学 医療学部健康栄養学科 小林 征子(管理栄養士)

 超大型の台風として接近前からかなりの危機感が持たれていた台風6号「マーゴン」は四国沿岸に甚大な被害を与え、そして日本東海上へと離れて行きました。私は、この台風接近が「第1回学術集会」開催日と重ならないようにと山口県下関の地から心配していましたが、台風は過ぎ去り、開催当日(2011/7/24)は晴天に恵まれたことと、名古屋駅前での開催というアクセス条件のよさには、大変有り難く感じました。
 当初、参加者数は30~40名位かなぁと思っていましたが、なんと私の予想の倍近い来場者数と伺い、冷房が効かない理由を納得した次第です。
部屋の両サイドには椅子が出され、熱心に傾聴されている先生方のお姿に、とても熱いものを感じました。
どのような場合でもイベント開催までにこぎつけることは大変なことだと思い
ます。「日本ローカーボ食研究会」の設立を手掛け、学術集会開催までの御苦労はいかばかりかと存じます。当日は安井先生のご挨拶に始まり、それぞれのお立場で権威ある先生方のご講演を拝聴させていただきました。
 
① ローカーボ食の現状と課題   灰本クリニック  灰本 元先生 
この会の代表であられる灰本先生の基調講演。外国への文献投稿と10年余りのクリニックでの実績をお話されました。アメリカの研究からローカーボ食はハイカーボ食よりも死亡率が高く、特に癌死が明らかになったこと。日本人の死亡率では3割が癌で占められていますが、食事との関係に非常に興味ある内容でした。最後は伝統的日本食に穏やかな炭水化物制限を行い、植物性脂肪・たんぱく質摂取を増やす日本型ローカーボ食を提案され締め括られました。
 
② ローカーボ食の症例      中京クリニカル  中村 了先生
中村先生は中京クリニックでのローカーボ食食事療法の概要をお話されました。私達管理栄養士には他の病院・クリニックでの一連の流れ、指導方法がよく理解できとても参考になりました。健常者であっても糖尿病の患者さんでも特に女性は甘いものが好きです。低カロリーの間食はかなり市販されていますが低糖質のものがまだ少ないのでさらなる開発が望まれることを話され、私達管理栄養士も食品メーカーと一緒になり開発に協力したいと思いました。
 
③ 稲作民にとってのローカーボ食  名古屋大学名誉教授  加藤 潔先生
加藤先生ご本人の20年に及ぶ血糖値と体重の測定結果と治療の記録を経時的にお話されました。20年という長い歴史の中でHbA1cを上手に管理されており、糖尿病患者さん全員が先生のようにコントロールできると合併症の発症も心配せずにQOLを高めることができるのではと思われました。
 
④ 血圧管理へのローカーボ食の応用 
    名古屋ハートセンター心臓血管外科  米田 正始先生
世界的な心臓外科医である米田先生の講演を聴くことができたことを喜んでいます。心臓手術の動画と重ね合わせて先生の講演は糖尿病ばかりではなく血圧管理に新しいローカーボ食の必要性を話され、今後ますます増える生活習慣病の治療の可能性を示唆されたと思います。

⑤ 食事と飲酒の血糖測定の体験  小又接骨院   村坂 克之先生
糖尿病患者さんでもある村坂先生が自ら大好きなアルコールの試飲で血糖値の上昇の程度をみられたお話は、実に楽しく今後の指導に役に立つ内容でした。特にワイン辛口は血糖値の上昇が全くなかったことを伺い、ローカーボ食を実施している患者さんにとってはうれしいお話だったのではないでしょうか。
 
⑥ ローカーボ食の指導方法と摂取栄養素の変化についての報告と課題
   灰本クリニック  篠壁 多恵先生
日頃実施している栄養指導方法を具体的に説明、また補助資料として使用するプリントで患者さんをその気にさせ、やる気に繋げていること。動機付けができていない患者さんの食事療法への動機付けをされている方法がよく伺えました。最後に摂取栄養素の変化と今後の課題としてPFCの割合がどのように変化するのか、たんぱく質、脂肪の質の問題、地域性や年代別にも特性があるのではないかと示唆され、今後の臨床研究の課題として検討すべきことをお話されました。
 
 学術集会後は糖質を制限した食品を囲んでの懇親会。参加した諸先生方は、各社が試行錯誤しながら丹精込めて商品化した食品を堪能されたようです。
次回は1月の予定と伺っていますが、この会が諸先生方の学術の場となり、研究会が大きく飛躍し発展することを会員のひとりとして願っています。

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