日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第5回学術総会参加者の印象記3

 学術総会参加の印象記

(株)浅田飴 薬剤師 小杉 寛之

 昨今「糖質制限」「ローカーボ」といったキーワードは多くのメディアでも取り上げられ、その有用性や安全性が活発に議論されております。「ローカーボ」といっても単に糖質を制限するだけではなく、その分の栄養素を何で補うべきか、日本人あるいは患者個人に沿っているのか、そしてこの食事療法の適応やエンドポイントはどこなのか、いつも俯瞰的な視点で学びの多い会ですが、今回も極めて先進的な研究や話題で溢れた学術集会となりました。
 昨年Nutrition and Metabolismに掲載された論文に関する灰本先生からのご講演では、その研究成果はもちろん、投稿から査読、掲載へのストーリーが大変面白く、糖質の制限量に応じたアウトカムを評価するという、お話をうかがった今となっては極めて基本的で重要だと思う事項でありながら、誰も研究したことが無いという興味深い内容でした。初診時の糖質摂取量が多いほどHbA1cが高いことや、指導前後での糖質摂取量とHbA1cの関係が明らかになったことで、患者さん個々の状態に応じた予測的な指導が可能となるだけでなく、患者さんご自身にとっても現在の食事のスタイルを大きく変えることなく、また複雑な計算をせずに「夜1食の糖質抜き」といった、よりわかりやすい、継続性の高い糖質制限へとつながっていくでしょう。
 また米田先生のご講演では心臓手術の患者に対するローカーボ食の導入や継続性の問題点、ローカーボの知識を踏まえた、栄養賦活したい、太らせたい患者への活用などが紹介され、手術のリスク低減だけでなく術後管理においても有用な可能性を知ることができました。
 名古屋大学名誉教授・加藤先生の果糖代謝とブドウ糖代謝に関するお話では、なぜ果物というものが存在するのか、どのように代謝されるのかという進化学、生化学的知見をうかがい、「甘いから悪」「糖質が入っているから全てダメ」では無く、果物とどのように付き合って行けばよいのか、再考する良い機会となりました。
 後半の管理栄養士による症例発表におきましては、これらの研究や理論を理解しながらも、実際の現場の難しさがひしひしと伝わるディスカッションとなりました。初診時の炭水化物摂取量が、150g程度から500gを超える方がいるという事実が物語っているように、患者さんの食事やライフスタイル、治療方針、人生観も千差万別。これに向き合うことの難しさや、ロールプレイングや症例検討といった活動を通じた医師やコメディカルの連携の重要性を知ることができました。

 糖質制限、ローカーボに関わる企業、団体が増えています。患者さんの選択肢が増えることは非常に喜ばしいことですが、我々企業側も目先の利益を優先した原理主義に陥ることなく、幅広い知識を得ていく必要があると痛感しております。
今後もより多くの参加者のもと、活発な議論を拝聴できることを心より願っております。

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