日本ローカーボ食研究会

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113.2型糖尿病における第二選択薬としてのスルホニル尿素薬と心血管リスクおよび低血糖:一般集団コホート研究

Sulfonylureas as second line drugs in type 2 diabetes and the risk of cardiovascular and hypoglycaemic events: population based cohort study
Antonios Douros et al. BMJ 2018;362:k2693 | doi: 10.1136/bmj.k2693

【目的】
 2型糖尿病患者において、メトホルミン単独療法と比較してスルホニル尿素薬の追加あるいはスルホニル尿素薬への切り替えが、心筋梗塞および虚血性脳卒中の発症リスク、心血管死および総死亡リスク、重度の低血糖の発現リスクと関連があるかを評価する。

【デザイン】
 一般集団コホート研究

【設定】
 UK Clinical Practice Research Datalinkに寄与する一般診療

【参加者】
1998年から2013年の期間にメトホルミン単独療法を開始した2型糖尿病患者

【主要評価項目】
 Prevalent New User Cohort Designを用いて、高次元傾向スコア、HbA1c、過去のメトホルミンの処方数に対してスルホニル尿素薬を追加した患者あるいはスルホニル尿素薬へ切り替えた患者とメトホルミン単独療法を継続する患者を1:1でマッチングさせた。研究アウトカムに対する調整ハザード比および95%信頼区間を概算するためにCox比例ハザードモデルを用いて2群を比較した。

【結果】
 メトホルミン単独療法を開始した77138人の中で25699人が研究期間中にスルホニル尿素薬が追加あるいは切り替えが行われた。平均追跡期間の1.1年の間に、スルホニル尿素薬を追加あるいはスルホニル尿素薬へ切り替えた群はメトホルミン単独療法を継続した群と比較して、心筋梗塞(発症率:7.8 vs 6.2/1000人年、HR:1.26、95%CI:1.01-1.56)、総死亡(27.3 vs 21.5、1.28、1.15-1.44)、重度の低血糖(5.5 vs 0.7、7.60、4.64-12.44)のリスク増加と関連していた。虚血性脳卒中(6.7 vs 5.5、1.24、0.99-1.56)、心血管死(9.4 vs 8.1、1.18、0.98-1.43)では発現リスクの増加傾向が認められた。また、スルホニル尿素薬の追加群と比較して、スルホニル尿素薬への切り替え群では心筋梗塞(HR:1.51、95%CI:1.03-2.24)、総死亡(1.23、1.00-1.50)のリスク増加と関連していた。虚血性脳卒中、心血管死、重度の低血糖の発症リスクに対する相違は認められなかった。

【結論】
 第二選択薬としてのスルホニル尿素薬は、メトホルミン単独療法と比較して心筋梗塞、総死亡のリスク増加と関連する。スルホニル尿素薬を導入する際は、メトホルミンから切り替えるよりメトホルミンを継続する方が安全であると思われる。

【読後感想】
 今回の研究結果はメトホルミンの有用性を証明したものとなったが、言い換えればスルホニル尿素薬の有害性を改めて認識させる結果となった。スルホニル尿素薬が引き起こす低血糖の有害性は、認知症の発症リスクや心筋梗塞による死亡リスクの増加としてこれまでの研究結果から既に明らかとなっている。またメトホルミンには抗がん作用も期待できることから、臨床的に服用を継続する意義は大きい。また安価な薬剤のため経済的負担も大きくないことも継続服用が推奨できる理由のひとつである。もっともスルホニル尿素薬を使用する必要がないレベルまで食事療法や運動療法で血糖コントロールができるのが最善であることは言うまでもない。

(薬剤師 北澤雄一)

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