日本ローカーボ食研究会

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54.日本の成人における大豆食品と納豆の摂取量と心血管死

日本の成人における大豆食品と納豆の摂取量と心血管死:高山研究
Dietary soy and natto intake and cardiovascular disease mortality in Japanese adults: Takayama study
Chisato Nagata et al. Am J Clin Nutr December 7, 2016 as doi: 10.3945/ajcn.116.137281.

背景:大豆の摂取と心血管疾患の低リスクが関連しているかどうかは未解明のままである。日本の伝統的な大豆食品である納豆は繊維素溶解作用のある酵素を含んでいる。しかしながら心血管疾患との関連は研究されていない。

目的:日本の一般人口集団を対象としたコホート研究において心血管死と納豆、大豆タンパク、大豆イソフラボンの摂取量との関連を調査することを目的とした。

デザイン:この研究には35歳以上の高山スタディに参加した男性13355名、女性15724名が含まれた。1992年の研究開始時にそれぞれの調査項目は半定量的なFFQ(食物摂取頻度調査)によって行われた。心血管死は16年以上の期間でにわたって確認された。

結果:追跡期間中に677件の脳卒中による死亡と308件の虚血性心疾患による死亡を含む総計1678件の心血管死が発生した。四分位で納豆の摂取量が最も多い群は最も低い群と比較して、様々な因子を調整すると、全ての心血管死のリスクの減少と有意な関連があった。(HR:0.75 [0.64-0.88])。また、全ての心血管死のリスクと総大豆タンパク、総大豆イソフラボン、そして納豆以外の大豆食品からの大豆タンパクあるいは大豆イソフラボンの摂取量には有意な関連はなかった。四分位で総大豆タンパクと納豆の摂取量が最も多い群は全ての脳卒中による死亡の低リスクと有意な関連があった。(HR:0.75 [0.57-0.99]、0.68 [0.52-0.88])。また、四分位で最も納豆の摂取量が多い群はまた虚血性脳卒中脳梗塞による死亡の低リスクと有意に関連していた。(HR:0.67 [0.47-0.95])。

結論:この研究結果は納豆摂取が心血管死のリスク減少に寄与するかもしれないだろうということを示唆している。

読後感想:納豆は昔から日本独特の健康食として親しまれている発酵食品であるあり、実際にカルシウムやビタミンなど体に必要な栄養素をバランスよく豊富に含んでいるが、世界的に流布した食品ではないために残念ながら大規模コホート研究の俎上には乗ってこなかった。今回の研究では納豆の心血管疾患に対する優れた効能が明らかとなり、とりわけ虚血性脳卒中脳梗塞の死亡リスクの減少には目を見張るものがあった。多くの大規模研究では単一食品のハザード比は-0.1~-0.25が相場であるが、納豆は-0.32とかなりの予防効果があった。納豆に関しては茨城県のご当地キャラが日本では一時ブームとなったが、この研究の結果によって近く世界的に脚光を浴びる食品となる日が来るかも知れない。岐阜大学の高山コホート研究は中規模ながら他の大規模コホートに比較して先駆的な成果を発信し続けている。今回、納豆という極めて地域的な食品が、岐阜大学いう地域色が強い大学からこの分野で最もインパクトファクターが高く世界中の多くの研究者や医師が読んでいるAJCNに掲載されたことに拍手を送りたい。(薬剤師 北澤雄一)。

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