日本ローカーボ食研究会

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62.晩年の精神的に刺激的な活動と軽度認知症発症の結果との関連

晩年の精神的に刺激的な活動と軽度認知症発症の結果との関連:APOE ε4 Genotypeの解析によって
Association Between Mentally Stimulating Activities in Late Life and the Outcome of Incident Mild Cognitive Impairment, With an Analysis of the APOE ε4 Genotype 

重要性:精神を刺激する活動と、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病発症のオッズの低下との横断的関連性が報告されている。しかしながら、晩年(70歳以上)の精神的に刺激する活動によって予測されるMCI発症の長期的結果についてはほとんど知られていない。

目的:晩年における精神を刺激する活動とMCI発症のリスクとの関連性に関する仮説を検討すること、またアポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型の影響を評価すること。

デザイン、設定、参加者:本研究は、メイヨークリニック老化研究所(ミネソタ州オルムステッド郡)における参加者からなる前向き集団ベースのコホート研究として実施された。ベースライン時に認知機能が正常であった70歳以上の参加者を対象に、MCI発症に関する転帰について追跡調査した。研究データの期間は2006年4月から2016年6月までであった。

主要評価項目および測定方法:ベースライン時には、研究登録前の1年間に参加者が行っていた精神を刺激する活動についての情報が提供された。神経認知評価はベースライン時に実施し、また15ヵ月間隔で評価された。専門家によるコンセンサスパネルが公開基準に基づいて認知診断を下した。ハザード比(HR)および95%CIについては、性別、年齢、教育水準で調整後、コックス比例ハザード回帰モデルを用いて算出した。

結果:最終コホートには認知機能が正常な高齢者1,929例(ベースライン時の年齢中央値77歳[四分位範囲:74~82歳]、女性50.4%[n=973])が含まれ、MCI発症に関する転帰について追跡調査が行われた。中央値で4.0年の追跡調査期間中には、ゲーム(HR 0.78、95%CI 0.65~0.95)および手工芸活動(HR 0.72、95%CI 0.57~0.90)、コンピュータの使用(HR 0.70、95% CI, 0.57~0.85)、社会活動(HR 0.77、95%CI 0.63~0.94)に、MCI発症のリスク低下との関連性があることが認められた。APOE ε4のキャリア状態による層別解析のデータでは、精神を刺激する活動を行うAPOE ɛ4非キャリアではMCI発症のリスクが最も低い(例、コンピュータの使用:HR 0.73、95%CI 0.58~0.92)傾向がみられること、また精神を刺激する活動を行わないAPOE ɛ4キャリアではMCI発症のリスクが最も高い(例、コンピュータ不使用:HR 1.74、95%CI 1.33~2.27)傾向がみられることを示す。

結論と関連性:認知機能が正常な高齢者では、晩年であっても精神を刺激する特定の活動を行った場合、MCI発症のリスクが低下する。この関連性は、APOE ε4のキャリア状態により異なる可能性がある。

読後感想:本試験の結果より、70歳以上の高齢者でもパソコン使用や社会活動等の刺激を受ける活動に取り組むことにより、認知症の発症リスクを抑制することが報告されました。平均寿命が伸び続けている中で、認知症患者が増えていくことが問題となりつつあります。日本老年医学会では高齢者を65歳と定義するには若すぎるとの見解もあります。
やはり、元気なうちは何かに積極的に取り組むことが一番の認知症予防と言えるのではないでしょうか。私も働けるうちは65歳まで働いて、元気うちは70歳までは社会活動に取り組んで、生きがいのある人生を送りたいと思いました。(木原  丈晴)

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