日本ローカーボ食研究会

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91.日本人男女における総死亡、癌死、心血管障害死と食事パターンの関係:JPHCコホート研究

Dietary patterns and all-cause, cancer, and cardiovascular disease mortality in Japanese men and women: TheJapan public healthcenter-based prospective study
Akiko Nanri1 et al.,  PLoSONE 12, 2017

【目的】
 メタアナリシスは健康食パターンと総死亡リスクは逆相関を、西洋食・不健康食パターンとは相関がないことを示している。しかし、日本人のはっきりした食事パターンと死亡リスクの関係はまだはっきりしていない。わたしたちは、食事パターンと総死亡、癌死、心血管死との関係を日本人の前向きコホート研究を行った。

【方法】
 男性36727人と女性44983人、年齢45歳から74歳まで、重大な疾患を持たない参加者がJPHC第二次研究に登録された(1995年~1998年)。
食事パターンは質問紙法によって確認された134食品と飲料の消費量を解析した。死亡ハザード比は2012年12月までの死亡をcox proportional hazard regression analysisを用いて評価した。

【結果】
 健康食パターンとは高頻度の野菜、果物、大豆製品。ジャガイモ、海草、きのこ、魚を食べる群で、総死亡リスクと心血管死亡リスクの低下と優位に相関した。最高位スコアの最低位スコアに対する多変量調整ハザード比は総死亡で0.82、心血管障害死亡で0.72(両方ともP<0.001)であった。西洋食パターンは高頻度の肉、加工肉、パン、乳製品の摂取が特徴であるが、それもまた総死亡、癌、脳心血管障害の死亡と逆相関があった。伝統的な日本食パターンはこれらのリスクとは相関がなかった。

【結論】
 健康食と西洋食パターンは日本の成人において総死亡、心血管障害死亡リスクの低下と相関があった。

【感想】
 Nanriさんは日本人の食事と健康の関係についてすぐれた研究を海外専門誌に発表し続けており、わたしが注目している数少ないこの分野の研究者である。最近、Nanriさんは個々の栄養素や食品ではなく食事パターンの論文が増えているようだ。
今回は全参加者8万人をそれぞれ3つの食事パターン別にスコア化して、それぞれの食事パターンを忠実に実行している人とそうでない人でどのくらい死亡リスクに差があるかをみている。言い換えれば、どの食事パターンを忠実に実行すると長生きかという課題と食事でいったどのくらい死亡を減らせるかという課題の両方を知ることができた。食事療法は最大で総死亡を-18%減らすことができることがわかった(健康食を忠実に行っている群)。総死亡リスクは西洋食パターンでも-12%も死亡リスクを減らせた。欧米に比べ肉食や乳製品の摂取量は圧倒的に少ないので、そのような範囲内で西洋食パターンは伝統的日本食パターンよりもかなり長生きということがわかった。

(医師 灰本 元)

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