日本ローカーボ食研究会

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101.心血管障害の患者における死亡リスク予想モデル:バイオバンク日本プロジェクト

Risk prediction models for mortality in patients with cardiovascular disease: The BioBank Japan project
Jun Hata et al. J Epidemiol Available online 27 December 2016

【はじめに】
 心血管障害は日本では主な死因である。この研究は慢性期の心血管障害を持つ患者の総死亡および心血管障害死の長期リスクのための新しいリスク予測モデルと開発することを目的とした。

【方法】
 バイオバンクジャパンに登録されたすべての患者のうち、40歳以上で慢性の心血管障害(脳梗塞と心筋梗塞)を持つ15058人を無作為にderivationコホート(10039人)とvalidation(妥当性)コホート(5019人)へ分類した。これらの患者を平均8.55年追跡した。総死亡と心血管障害死のリスク予想モデルはコックス回帰分析を用いたderivationコホートを使って開発した。これらの5年間の予測能はvalidationコホートで評価された。

【結果】
 観察期間中に総死亡と心血管障害死はそれぞれderivationコホートでは2962人、962人、validationコホートでは1536人、481人であった。総死亡と心血管障害死のリスク予測はderivationコホートから10種類の従来の危険因子、つまり年齢、性別、心血管障害のタイプ、高血圧、糖尿病、総コレステロール、BMI,現在の喫煙、現在の飲酒、身体活動度などを用いて開発した。これらのモデルでは中等度の感度と良好な検定結果が明らかとなった。

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【結論】
 わたしたちは慢性期の虚血性心血管障害患者の総死亡と心血管障害死を予測できるモデルを開発し、それが有効であることを証明した。このモデルは慢性期の虚血性心血管障害患者における長期リスクを評価するのに役立つだろう。

【読後感想】

 表3から計算して表4をみると、患者の5年以内の総死亡と心血管障害死亡がたちどころに予想できる。このようなモデルは今までそれほど見たことはない。とくに秀逸なのは、年齢があらゆる危険因子のなかで最も高い点数となっている点で、多くの研究では年齢調整されたハザード比が示されているので年齢がどのくらい重要かは水面下の出来事であった。今回、年齢の重要性が白日に曝されたと思う。次に高かったのはBMIでそれも<18.5でもっとも点数が高くなり死亡リスクが上がっている。まさに肥満パラドックスそのものである。それらに比べると糖尿病も、高血圧も、コレステロールも点数は小さい。とくに驚いたのは総コレステロールが低いほど点数が高いが、総コレステロールが高くても点数は0点であった。これは日本人ではコレステロール単独は危険因子にならないのでは、というわたしの臨床感覚から発した疑問に答えてくれるような気がしている。

(医師 灰本 元)

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