日本ローカーボ食研究会

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94.自己報告に基づく糖尿病患者の体格指数と死亡率の関連:日本コラボレーションコホート(JACC)研究

Association of Body Mass Index and Mortality in Japanese Diabetic Men and Women Based on Self-Reports: The Japan Collaborative Cohort (JACC) Study

Epidemiol 2015;25(8):553-558 doi:10.2188/jea.JE20150011

要約

【背景】
 アジアの糖尿病患者の体格指数(BMI)と死亡率、特に肥満パラドックス(BMIが高いほど死亡リスクが低い)との関連性は未解決のままである。

【方法】
 1988〜1990年の日本コラボレーションコホート研究で3851人の自己報告日本人糖尿病患者(男性2115人、女性1736人)を追跡調査した。患者は40〜79歳であり、心臓血管疾患、癌、腎臓病、または結核が含まれる。BMIは<20.0、20.0-22.9、23.0-24.9、および≧25.0 kg/m2の4つのカテゴリに分類された。

【結果】
 54707人年のフォローアップ期間中、すべての原因による死亡1457人、心血管疾患死445人、癌死421人、腎臓病死43人、感染症死148人が記録された。すべての原因、心臓血管疾患、癌、および腎臓病からの死亡率はBMIとのL字型の関連性を示した。BMIが20.0-22.9 kg/m2である糖尿病患者と比較して、BMIが23.0-24.9 kg/m2および≧25.0 kg/m2である患者は、感染症による死亡リスクが低い(すなわち肥満パラドックス)。感染症による死亡の多変量HRsは、BMIが23.0-24.9 kg/m2および≧25.0 kg/m2の参加者のうち、それぞれ0.50(95%信頼区間、0.31-0.81)および0.51(95%信頼区間、0.32-0.82)であった。喫煙状況や年齢による層別化、早期死亡の排除後も同様の結果が観察された。

【結論】
 我々は、BMIと感染症による死亡率との関連性が肥満パラドックスを示していた一方で、すべての原因、心臓血管疾患、癌および腎臓疾患からのBMIと死亡との間のL字型の関連性を観察した。

【感想】
 以前に院長が紹介している2017年にClinical Epidemiologyに投稿された韓国の数万人規模の観察研究で、糖尿病患者においてBMIが高い方が死亡率は低いという、いわゆる肥満パラドックスが成立していることを示していた(Clinical Epidemiology 2017:9 667–678)。しかし、日本人を対象とした糖尿病患者のBMI別の死亡率を比較した論文はほとんどなく、その意味でこの論文は貴重である。ただ、この論文は症例数が数千人規模と少なく、データが30年近く前であり、現在の状況とは違っているかもしれない。しかし、それでも1980年代後半のデータにおいて、肺炎などの感染症ではBMIが高い方、すなわち太っていた方が死亡率は低いという結論が出されている。

(文責:灰本耕基)

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