日本ローカーボ食研究会

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104.ビスフォスフォネートと大腿骨大転子下骨折、大腿骨骨幹部骨折、非定型大腿骨骨折リスク:システマティックレビューおよびメタ解析

Bisphosphonates and Risk of Subtrochanteric, Femoral Shaft, and Atypical Femur Fracture: A Systematic Review and Metaanalysis
Lydia Gedmintas et al. J Bone Miner Res . 2013 August ; 28(8): 1729?1737. doi:10.1002/jbmr.1893.

【要約】
 ビスフォスフォネートが、ある特定の種類の骨粗鬆症関連骨折を予防する有力なエビデンスがある一方で、非定型大腿骨骨折と関連するという懸念も存在する。この存在するかも知れない関連性を調査した近年発表された数々の研究結果は、この関連性の存在および関連の強さに関してはそれぞれ一致しない。我々は、ビスフォスフォネートと大腿骨大転子下骨折、大腿骨骨幹部骨折、非定型大腿骨骨折との関連性を調査した研究についてシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。
補正相対リスクの推定値を算出するためにランダム効果モデルを用いた。サブグループ解析は、試験デザインが症例対照研究あるいはコホート研究であり、非定型大腿骨骨折を検証した定義を用いた研究、ビスフォスフォネートの服用期間について報告した研究を対象として行われた。
11の研究がこのメタ解析に含まれ、そのうちの5つが症例対照研究であり、残りの6つがコホート研究であった。ビスフォスフォネートの曝露は、大腿骨転子下骨折、大腿骨骨幹部骨折、非定型大腿骨骨折の発現リスクの増加と関連しており、その補正相対リスクは1.70(95%CI: 1.22-2.37)であった。非定型大腿骨骨折を定義するために主に診断コードを用いた研究のサブグループ解析(RR: 1.62; 95%CI 1.18-2.22)と比較して、米国骨代謝学会(ASBMR)の定める基準を用いた研究のサブグループ解析(RR: 11.78; 95%CI 0.39-359.69)は、ビスフォスフォネートの服用に伴う非定型大腿骨骨折の発現リスクがより高いことを示唆しているが、信頼区間が広く、高度の異質性(I2=96.15%)が存在する。少なくとも5年間のビスフォスフォネートの服用を調査した研究のサブグループ解析は、大腿骨転子下骨折および大腿骨骨幹部骨折に対する補正相対リスクが1.62(95%CI 1.29-2.04)であることを示した。
 このメタ解析は、ビスフォスフォネート服用患者では大腿骨転子下骨折、大腿骨骨幹部骨折、非定型大腿骨骨折の発現リスクが増加することを示唆する。ビスフォスフォネートの長期服用に伴う非定型大腿骨骨折の発現リスクを調査した別のサブグループ解析は、このサブグループではデータが限られていることを示している。非定型大腿骨骨折に関するこの発現リスクの観察的な増加の公衆衛生に対する影響は明らかではない。


【読後感想】
 ビスフォスフォネート製剤は日本では2001年ごろから経口製剤が発売され、現在でも閉経後骨粗鬆症の骨折予防やステロイド誘発性骨粗鬆症などに頻繁に処方されており、脊椎骨折や手関節骨折などに対してはある程度の予防効果を示している。しかし、その至適投与期間については議論が続いており、長期投与に対して警鐘を鳴らすような意見も出てきている。2013年に発表されたこのメタ解析は、5年以上のビスフォスフォネートの服用によって大腿骨の骨折リスクの増加という本来の効果に対して逆説的な影響を示唆している。本来骨折を予防するはずの治療によって反対に骨折を増加させてしまうというのは何とも皮肉な話である。しかも大腿骨の骨折は高齢者にとってはそのまま寝たきり状態に直結するため、介護者にとっては肉体的、精神的そして経済的な負担増を余儀なくされることが予測される。長期にわたって服用することを前提とした薬はそのまま漫然と処方されることが多いが、逆説的な影響を含んでいる可能性を疑う視点も重要である。

(薬剤師 北澤雄一)

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