71.アジア人の糖尿病では肥満パラドッスが明らかに成立する!
アジア人の糖尿病では肥満パラドッスが明らかに成立する!
韓国における肥満指数(Body Mass Index)別の糖尿病発症と死亡
Incidence of diabetes and its mortality according to body mass index in South Koreans aged 40–79 years
Hae Hyuk et al. Clinical Epidemiology 2017:9 667–678
目的:この研究の目的は韓国成人のコホートにおいて、BMI別の糖尿病発症と総死亡を評価してBMI別の発症危険度と死亡危険度を比較することである。
患者と方法:40~79歳の糖尿病がない韓国成人のNational Health Insurance databaseに基づいて登録時のBMIを算出、糖尿病発症に関連した死亡危険度を時間依存性コックスモデルと使い、糖尿病診断の日時を考慮しつつ評価した。
結果:私たちは最初のコホート(426,692人)では8年の追跡中に29,307人の糖尿病発症と22,940人の死亡、二つ目のコホート(850,282)では10年の追跡で73,756人の糖尿病発症と57,556人の死亡を記録した。
総死亡について時間依存性コックスモデルは、糖尿病発症とベースラインBMIに有意な正の相関(二つのコホートそれぞれP=0.018とP<0.001)を明らかにした。BMI別の解析では糖尿病の死亡危険度は、一つ目のコホートでBMIが16.0–18.4, 18.5–22.9, 23.0–24.9, 25.0–29.9, and 30.0–34.9 kg/m2に対してぞれぞれ1.50 (95% confidence interval [CI], 1.09–2.07), 1.39 (95% CI, 1.26–1.54), 1.20 (95% CI,1.08–1.35), 1.18 (95% CI, 1.07–1.30), 0.97 (95% CI, 0.74–1.28)であり、二つ目のコホートでは1.44 (95% CI, 1.18–1.74), 1.33 (95% CI, 1.26–1.41), 1.24 (95% CI, 1.16–1.31), 1.11 (95%CI, 1.05–1.17), and 0.99 (95% CI, 0.85–1.16)であった。BMIが下がるほど死亡危険度は増えるというトレンドがあり、とくに年齢、正、喫煙別のサブグループでもっとも明らかであった。
結論:発症した糖尿病は高いBMIよりも低いBMIの成人における総死亡上昇と関連している。これは正常体重や低体重の成人において2型糖尿病の発症予防と治療の重要性を強調する。
読後感想:これまで糖尿病の発症はBMIが高いほど多く、しかし死亡危険度はBMIが低いほど多いという、いわゆる肥満パラドックスが成立するのではないかという論文は3つあって、すべてアメリカ人を基としていた。そのうちの一つ、ハーバード大学の結果はBMI>30では死亡危険度は上昇するUカーブを示したが、残りの二つは直線的に低下していた。つまり、BMI>30では肥満パラドックスは成立しないと指摘されていた。この研究は、糖尿病のBMIと死亡危険度の関係をアジア人で初めて証明した。そしてアジア人ではアメリカ人に比較してより直線的にBMIが低いほど死亡危険度は多く、高いほど少ないことがわかった。
この結果は、私たちが「ゆるやかな糖質制限食ガイドライン2016」にすでに記したように、糖尿病の治療は適正体重(BMI>20)を維持することが糖尿病の生命予後に極めて重要であることを再認識することになった。(文責 医師 灰本 元)
BMI別の糖尿病の死亡危険度
BMI別の糖尿病の発症危険度