日本ローカーボ食研究会

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70.牛乳摂取と認知障害リスクのメタアナリシス

牛乳摂取と認知障害リスクのメタアナリシス
Meta-Analysis of Milk Consumption and the Risk of Cognitive Disorders.
Lei Wu et al. Nutrients 2016 Dec 20 ,824 doi:10.3390/nu8120824

要約:牛乳摂取と認知障害との関連はいくつかの疫学研究で調査されてきたが、まだ結果に対する論争が続いている。牛乳摂取と認知障害との潜在的な関連を評価するために行われた定量的な試験はない。牛乳摂取と認知障害(アルツハイマー病、認知症、認知機能の低下/障害)との関連を報告した観察研究を入手するために2016年10月までのPubmed、Embaseを検索した。牛乳摂取量の最も多い群と最も少ない群でのそれぞれのオッズ比と95%信頼区間を算出するためにinverse-variance methodを用いた。サブグループ間の異質性を評価するためにサブグループ解析とメタ回帰分析を行った。検索した結果、総計10941人の研究参加者を含む7つの研究を確認した。牛乳摂取量の最も多い群では異質性(I2¬=64%、P=0.001)を伴いながらも認知障害リスクの減少と有意な関連性を認め、オッズ比(95%信頼区間)は0.72(0.56-0.93)であった。サブグループ解析によって7つのうち、ただひとつの観察研究に含まれた虚血性脳卒中の患者ではこの関連性がより顕著に示された。さらに牛乳摂取と認知障害との有意な逆相関はアジア人に限られ、アフリカ人での有意な相関はなかった。この研究で牛乳摂取と認知障害との有意な関連性を見出したが、研究の限界によってこの関連性を確立したものにすることはできなかった。牛乳摂取に関する潜在的な用量反応関係を定量化するため、また異なる患者特性における関連性を調査するために今後大規模な前向きコホート研究が必要とされる。

読後感想:今回は牛乳消費と認知障害についての研究です。研究内容を見ていくと参加者の少なさ、異質性の高さで気になる部分はありますが、牛乳摂取が一定の認知障害リスクの減少に関係する可能性もありそうです。アジア人では一般的に欧米より牛乳摂取が少ないにも関わらず有意な差が出たのは、理由はともかく注目したい結果です。いろいろな論文を見ていると死亡や心臓病を見ている研究は多くありますが、認知障害に関するような研究はそれほど多くないです。このメタアナリシスには日本人の研究が二つ含まれますが、参加者はそれぞれ2000人未満で小規模のコホート研究でした。しかし認知障害は高齢化社会になるうえで本人だけでなく家族や周りの多くの人々に影響を与える疾患なだけに、もっとこのような食べ物と認知障害予防の研究が進めばと思います。(薬剤師 松岡武徳)

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