日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第四回学術集会参加者の印象記

学術集会参加の印象記

小早川医院 管理栄養士 南磨紀

 2月2日(日)名古屋駅の安保ホールで行われた日本ローカーボ食研究会「第4回学術集会」に初めて参加をしてきました。
 私は、昨年(2013年3月)石川県から名古屋の移転をきっかけに、小早川医院で管理栄養士として仕事を始めました。石川県ではフリーランスの管理栄養士として10年程行政(金沢市・内灘町・川北町)の栄養教室、国民栄養調査、乳業メーカーの料理講師、透析クリニック、特定保健指導などに携ってきました。毎日出勤先、勤務内容が違う生活は幅広く知識を得られますが、深い知識を得るのは難しいと感じており、今回このような機会に恵まれた事を大変感謝しています。

 昨今、テレビや雑誌、インターネットで糖質制限が取り上げられる事が多くなり、深い知識がないまま取り組み体調を崩すという課題が見えるようになってきました。日本人は新しい流行に飛びつくが、飽きっぽいので体調を崩す前にブームが終了すると本多京子先生の講演会で聞いた記憶がありますが、この糖質制限は健康被害が取り上げられる程浸透し、糖尿病学会でも糖質をターゲットにした新たな方法に論議が交わされるようになってきました。今回の学術集会は、2013年12月出版された「正しく知る 糖質制限食 科学でひも解くゆるやかな糖質制限」の解説と、「ローカーボの展望と課題」のパネルディスカッションで構成されており、糖尿病食事治療の世界では大変ホットな話題だったのではないでしょうか。

 第一部で印象に残った講義は「ローカーボと体重」です。データの比較から、糖質制限食の特徴はカロリー制限に比べ早い段階で減量が出来る事がわかりました。肥満者が体重を落とす際、効果が早く見える事は重要だと思います。モチベーションを上げ成功率が上がるからです。体重と同時に中性脂肪も改善する症例が多く、それは動脈硬化と関係性が深い小型LDLコレステロールを減らす効果が期待できます。メタボリックシンドロームの「小さなリスクも重なると怖い」と言う観点からも糖質制限の効果を実感しました。ただ、どのような減量でもリバウンドを防ぐ事が大切です。効果が早く出るからこそ、減量後のサポートの必要性を強く感じました。また、この講演の後で外科の先生から、脂肪のある無しの画像を比較し、内臓脂肪が手術にいかに邪魔であるかを伺いました。手術は緊急性を要することが多く、術後の体力温存が必要です。効果が早く、体力が落ちにくい「糖質制限による減量」は外科手術の世界でも今後さらに期待が寄せられるのではないでしょうか。
もう一つ印象に残った講義は「血糖値が上がる酒と下がる酒」です。一定の条件下でアルコールを飲み血糖値がどのように変化をするかを記したデータでした。「糖尿病ネットワーク」に間食における血糖値変化のグラフがありますが、アルコールのデータは初めてでした。日本酒は糖質が多いというイメージから敬遠することが多いのですが、今回一概にそうは言えない事がわかりました。実際に体験された方から酔い心地や満足度を聞いた事も大変勉強になりました。また空腹時のアルコールは低血糖の危険がある事も重要なポイントでした。実際、私の先輩(糖尿病ではない方)は忘年会で、空腹で温泉に入った後アルコールを飲み低血糖を起こしています。アルコールは血糖値を上げるから食べずに飲んじゃおう!という考えは危険で、血糖降下薬を利用されている場合は特に低血糖予防の情報をお伝えしなければなりませんね。

 第二部で印象に残った事は三つあります。第一はゆるやかな糖質制限食をどのように浸透させていくか…という事です。医薬品メーカーからの協賛は難しく、食品メーカーからも費用面で大きな課題がある事を知りました。金沢大学が総エネルギーに対して何%の炭水化物量が望ましいかを研究しながら栄養指導し、糖尿病学会シンポジウムで医薬保健研究域の篁(たかむら)俊成准教授がその研究発表をされたように、この分野はこれからもっと進歩を遂げていくのだと思います。たくさんのデータを集め、それを検証し、効果があることを示し、たくさんの賛同が得られることを心から望んでいます。二つ目は、炭水化物が好きな場合どの様に糖質制限を実践するかという課題には、カーボカウントで使う一食あたりの炭水化物表が生かせないかを考えました。一食あたりの満足度は人によって違うはずです。自分に合ったローカーボ食を自分で見つける自主性に注目したのです。ご飯よりパン食に満足感がある方や、麺類は一食あたりの炭水化物量が多いと気付かれた方は、麺と具の割合を工夫することを提案します。今回の集会に来て頂いた、こんにゃくマンナンの利用や、楽園フーズのパン、シュガーカットなど人工甘味料の提案も有効かと感じます。そして最後は、痩せの糖尿病の方や、高齢者の方へのエネルギー不足問題です。どちらかと言えば、そのような方は油脂を嫌う傾向にあります。しかし、BMIと寿命を見てもわかる通り、痩せすぎは寿命を縮める可能性があり避ける必要があります。某乳業メーカーは乳(NEW)和食と銘打ち和え物の中に粉チーズを入れる、炒めものにチーズをいれ溶かして調味料として使う、乾物を牛乳で戻す、コーヒーホワイトナー(粉末)の利用もしていました。参加者の多くは「量は少ないけど腹持ちが良い」「乳製品というイメージがない」とおっしゃいます。調理ができる方には有効だと思います。低栄養に直面した介護事業も経験しました。金沢市では、アルブミン値の低い方や体重減少の著しい方を対象に訪問を行っています。お菓子を食事代わりにする高齢の方が多いのが特徴でした。惣菜や缶詰を利用し、練りごま、豆腐を使った白和え、肉や魚にあらかじめ油をまぶしたり(しっとり感が出る)野菜をゆでる際に油を落とすなどの提案をすることが多かったです。料理をする方は改善に向かう場合が多く、料理に慣れていない方は、卵かけご飯や、みそ汁に油揚げや豆腐を入れる事が精一杯と言う印象でした。これから高齢化が加速していくであろう社会において、自分に何ができるのかを問いかけ、知識を高めていかねばならないと感じています。名古屋でも皆様からの刺激を受け頑張っていきたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します。

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