日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第三回学術集会の印象記(管理栄養士から)

セミナー参加の印象記 (管理栄養士)

中部労災病院 栄養管理室 水野 智春

 平成25年1月27日(日)に開催された日本ローカーボ食研究会、第三回学術集会に参加し感じたことを印象記として報告致します。私は、ローカーボ研究会セミナー参加は2回目となります。当日は寒い中、多くの参加者で席が埋め尽くされ、ローカーボ食に対して関心が高いことがうかがえました。

 学術集会は、特別講義1として名古屋大学名誉教授の加藤潔先生から「生命の進化における炭水化物の意義」という壮大なスケールの話から始まりました。生命の進化の過程について詳しく話され、炭水化物はエネルギー源としてだけでなく、生体分子の合成成分でもあることを教えていただきました。

 次に4つのトピックスの後、特別講演2として、灰本クリニックの灰本元先生から「HbA1cレベルに応じた炭水化物制限の階層化について」の講演がありました。世界で発表されている数々の論文の中から、厳しい炭水化物制限では総死亡率や心血管イベントが増えることや日本人の炭水化物の摂取量は120~420gに広く分布されていることが2010年の国民栄養調査から示されていることなどの話はとても興味深いものでした。また、灰本クリニックでのローカーボ食を始める前のHbA1cを層別化して、その層別化にそれぞれの炭水化物摂取量を設定して指導した結果、血糖値とBMIは有意に低下し、糖尿病治療薬が減ったことが示されました。灰本クリニックでは、外来患者さん対象なので、患者さん自身が実行するために炭水化物を簡便に制限出来る方法を指導された事と、層別化によって炭水化物の制限量を加減した事がしっかりと結果として成果を上げていることは説得力のある内容でした。

 パネルディスカッションでは、「痩せる症例とやせない症例」として2施設から事例発表が行われました。病院栄養士として働いている私にとっても日々同じような経験をしており、発表者の努力や悩むことは同じだと感じました。

 学術集会会場では食品展示コーナーも設置され、糖質制限された食品がいくつか紹介されていました。その中で、私は糖質制限のパンに興味を持ちました。パンを食べる患者さんは多く、このようなパンが商品として市場に出てきたことは患者さんにとって選択肢が広がります。しかし、どこでも買えるまで流通ルートに乗っていないことが残念ですが、今後このような商品がどこでも手軽に買える日が来ると良いと思いました。

 最近、糖質制限食についてのテレビ放映や出版本がたくさん書店にもおいてあり情報が混乱しているのではないかと危惧しています。特に、糖質をとらなければ、血糖値は下がり痩せられると思い自己流で行っている方も多くみられます。患者さんにとって、医療従事者から指導される内容とマスメディアを通して得られる内容が違うことや耳触りの良い内容に流れる傾向が果たして将来の健康管理によいのかどうかの検証などいくつもの問題を感じます。そのためには、まず医療従事者である私達は、日々研究を重ね患者さんがどこでも簡単に実行出来て効果のある指導を行うための努力を付けたいと感じたセミナーでした。

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