日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

学術集会参加者の感想

「日本ローカーボ研究会」第二回学術集会に参加して

第二回学術集会印象記
小早川医院   管理栄養士 小早川宏江

 私は、第一回の学術集会に出席して、ローカーボ食の基礎を学ばせていただきました。また、灰本クリニックで院長先生の診察や篠壁先生の栄養指導の現場を見学させていただくチャンスにも恵まれました。その後、当院でも糖尿病やメタボリック症候群の患者さんに、ローカーボ食の栄養指導を行っています。医師の限られた診察時間の中ではわからない、患者さんの生活の様子や食事の嗜好等、ゆっくり対話しながら指導しています。時には、話が弾んで40分近くかかることもあります。患者さんの反応はおおむね良好で、今まで食事療法に全く興味のなかった方が、やる気になっていただけた例も多く、2回目の指導を受けた方もいらっしゃいます。「この食事療法は自分には無理」といった拒否反応はほとんどありません。初めての経験ですが、比較的順調にスタートできたと思います。ただ、私自身は従来の「カロリー制限食」で教育を受けてきていますので、ローカーボ食の指導をしながらも、何となく違和感を払拭しきれていませんでした。「炭水化物を減らせば、脂質はたっぷり摂っても大丈夫」という部分がどうしてもしっくりこなかったのです。そんな状況で、第二回の学術集会に出席させていただきました。

 今回の学術集会では、多くの施設からローカーボ食に導入されたいろいろな症例に関する発表がありましたが、各施設の苦労や創意工夫がぎっしり詰まっていて、大変勉強になりました。このような研究会で多くのケースを知ることが、今後の私たちの栄養指導のレベルアップにつながると思いました。そして、ローカーボ食という新しい治療法を発展させていくためには、施設間の情報交換が大切であることも実感させられました。ただし、このような症例報告を理解するためには、私たち栄養士も、医療の現場で使われている薬剤に関する大まかな知識を身につける必要があると思います。また、パネルディスカッションでは「ローカーボ食でなぜ中性脂肪が下がるか」が話題になっていました。灰本先生のお話では、インスリンの作用によって、肝臓で脂肪酸から中性脂肪が合成されるので、インスリンの分泌を刺激しにくいローカーボ食では中性脂肪が下がるのだそうです。この事実は、先ほど申し上げた私のローカーボ食に対する違和感を解消するカギになりそうなので、インスリンの作用についてももっと勉強してみたいと思います。

 今回は、ローカーボ食で血糖や脂質異常が改善したという発表が多かったですが、一方で動物性脂肪中心のローカーボ食では、厳しくすればするほど心血管病や癌による死亡率が高くなることや、インスリンやSU薬とローカーボ食の組み合わせで低血糖が起こりやすいこと、ローカーボ食を始めて3~6カ月経過したところで、脂質摂取への不安感などから、炭水化物摂取量だけでなく、脂質の摂取量も減少してしまい、総カロリーが極端に減少する「不安定ローカーボ」の状態に陥りやすいことなど、ローカーボ食の問題点もはっきりとしてきました。私たち栄養士は、ローカーボ食の利点ばかりを強調するのではなく、このような問題点もしっかりと理解したうえで、患者さんが、長期間にわたって無理なくこの食事療法を継続して行けるようにサポートして行かなければなりません。また、日本人にはやはり和食を中心とした食事療法が一番自然だと思いますので、将来的には、和食中心のローカーボ食を指導できるようにしたいと思います。また、当院は高齢の方が多いので、そういう方たちの脂肪摂取に対する抵抗感を徐々に取り払うような工夫をして行きたいと考えています。

 ローカーボ食は、カロリー制限食に比べて患者さんのストレスが少なく、食生活を楽しみながら続けることができる、優れた食事療法だと思います。賛同していただける方がもっと増えて、この研究会が発展することで、少しでも多くの患者さんがこの新しい食事療法を正しく実践できるようになることを願っております。

おすすめコンテンツ

賛助会員

協賛医療機関

医療法人芍薬会灰本クリニック むらもとクリニック